HRラウンドテーブル 12月度開催報告

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2015/02/02

シニア人材の活用と課題〜制度から職場環境づくりまで〜

2014年12月16日、「シニア人材の活用と課題~制度から職場環境づくりまで~」をテーマに、ランスタッド・HRラウンドテーブルを開催し、3社4名の人事労務業務に従事する方々に、お集まりいただきました。

ご参加企業(あいうえお順):
  • 味の素株式会社
  • 中外製薬株式会社
  • 株式会社ニコンスタッフサービス

冒頭、ランスタッド・マーケティング&コミュニケーション本部長松井隆より、「シニア人材の活用は、法律で義務化されたことをうけ、多くの企業が制度化に動いた一方、その中身については、給与・待遇、役職、評価制度、担当業務など、施策内容は企業間のばらつきがみられます。また、再雇用導入に伴い、再雇用シニア社員とその他の社員との関係、また求められる役割について課題を感じている企業が多いのも現状である。」と、課題提起となる挨拶がありました。

続いて、シニア人材の活用と課題に関して、制度及び環境づくりのそれぞれの対応策に関して、ランスタッド、HRソリューション事業部所属の渋谷善久より発表をさせていただきました。 

(Photo: Brian Scott Peterson)

雇用確保措置義務化、働く人も定年を超えて勤務を希望

2013年4月、高年齢者雇用安定法が改正、雇用確保措置を講じることが義務付けられました。この義務化された時期に前後して、多くの企業は定年制の廃止、労働者が満65歳となるまで定年を引き上げる、または継続雇用制度(再雇用)を設ける対応策のいずれかを制度として取り入れ運用を開始しています。

OECDの調査によると、日本の人口における生産年齢人口(15歳から64歳)の比率は、2013年の62%から2020年には約59%、2030年には約57%へ落ち込むと予測されています。人口構造上、シニア層を含む、多様な人材の活用が企業の急務となっています。

働く人の意識も、「定年退職」は過去のものとなりつつあります。ランスタッドが行ったグローバル調査では、日本は諸外国に比べ、定年を超えて長く勤務することに意欲が最も高い国でもあります。これには日本の労働者が、欧米のようなプライベートとのバランスを重視したキャリアではなく、「仕事」を軸に人生を形成する傾向にあるからであると考えられています。60歳という節目を迎えた以降も、自らと社会とのつながり、継続した自己研鑽を希望する労働者が多いのも事実です。

(Photo: Brian Scott Peterson)

職場ではシニア人材の再雇用、定年延長で様々なひずみが発生

一方で、職場においては制度、職場環境の側面で、ひずみが発生しています。制度面としては、給与・雇用形態、役職、職務内容、評価は変更をするのか、 従来と同等の内容を継続するのか、それに伴うコスト増が課題となってきます。再雇用者、雇用延長者以外、組織全体の制度の見直しが必要となります。

また、職場環境にも課題が存在します。以前とかわらない部署で再雇用された社員と元部下の間で役職が入れ替わるものの、互いに意識の切り替えが難しく、役割に矛盾が生じたり、仕事にやりづらさを感じる元部下、同僚が多く存在します。特に、シニア人材の再雇用、定年延長が増えることで、若手・ミドル層は、「役職の逆転」、「成長機会の遅延」、「事務処理負担」などのコンフリクトに直面、組織全体の人間関係の悪化に繋がりかねません。

(Photo: Brian Scott Peterson)

雇用延長をして勤務するシニア人材の期待、モチベーションと、会社が人事戦略上期待する役割とのギャップも存在します。若手・後継者へのスキル・ノウハウの継承、豊富なネットワークを生かした営業支援などの新しい役割を担っていただくためには、改めて役割の相互合意、意識改革のタイミングをもつ必要があります。

キャリア後半に留まらない、早期の準備施策が求められる

対応策として、定年を迎える直前ではなく、早期から年齢軸にとらわれないキャリア研修機会の提供、人事諸制度の見直し、年功制を廃止して職務給への移行などの改革を実施すると同時に、組織全体でのキャリア機会づくり、多様な働き方の推進の必要性に関し、渋谷より発表がありました。

悠長には構えていられない、今後増える定年退職者への対応は急務 

参加企業の方々を交えた議論では、各社定年対象者が増加傾向にあり、再雇用や定年延長に付随する様々な対応に苦慮している状況が浮かび上がりました。特に「バブル世代の定年を中期的に控え、悠長に構えていられない」との危機意識も共有されました。

キャリア開発研修や職務給評価を、若手を含む組織全体を対象に導入する方向性を目指しながらも、早期にキャリア開発、社外を含めたキャリアの選択肢を示すことには、「優秀な人材の流出につながるのではないか」と、弊害を懸念する声も聞かれました。「いつ、どのタイミングで」との議論に対しては、渋谷より「社内で活躍、成長の場を見い出せていない人材は40代に限らず多くいる。年齢に関わらずキャリアを棚卸し、明確なキャリア目標を立て、会社としてのサポートを考え、実施することで、実力とモチベーションを引き出すことができるのでは」と、提案がありました。

ランスタッドでは、人事労務に関わるプロフェッショナル向けの交流型・小規模の勉強会を毎月開催しております。次回の開催は2月中旬、シニア人材の活用についてさら議論深める場を設ける予定です。

(Photo: Brian Scott Peterson)

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