オルカン創始者・代田秀雄氏が語る「人生の波乗り」と、折れないキャリアの作り方~変化の時代を生き抜く「真の適応力」~

AIの台頭や不透明な経済状況の中、自分にどのように投資して、「働く価値」をどう高めていけば良いのでしょうか。
このたび、投資の世界に新風をもたらし今後のキャリアも注目される代田秀雄氏にお話を伺いました。 「広く分散して長期で育てる」という投資の鉄則を"オルカン"こと「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」で形にしてきた人物です。
現代のビジネスパーソンに求められる「真の適応力」のヒントが詰まった、代田氏の歩んできた道筋について伺いました。
キャリアは狙い通りにいかないことも。だから「波乗り」がいい
ーそもそも、代田さんが金融業でキャリアをスタートされたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

若い頃から漠然と、自分がやったことで人に喜んでもらいたい、そして時代の流れの中でずっと残る「仕組み」を作りたいという思いがありました。当時の信託銀行は、長期の資金提供を通じて日本のインフラ形成に貢献できる場所。不動産も運用も......と業務領域が広く、ここなら自分自身のキャリアも多角的に広げられると考え、三菱UFJ信託銀行へ入行したのです。
ところが、30代の頃に従業員組合の活動に奔走し、会社とも丁々発止でぶつかりあっていたら、ちょっと一生懸命すぎたのか、入社10年目でまったく経験のない運用のセクションに異動になりました。当時は想定外でしたが、そこが後に24兆円を動かす「宝の山」の入り口だったわけです。
狙って乗ったキャリアコースではないけれど、結果として良かったと思いますね。私は人生、波乗り主義。
オルカンも波乗り主義的でしょう。狙った場所には行けないけれど、来た波をどう乗りこなすかで、30年後の景色はまったく違うものになる。やりすぎたかなと思うこともありますが、今思い返せばその時々で精一杯やっていたんじゃないかと。
「マーケットへの違和感」を信じて、ブレイクスルーへつなげた
ー運用のセクションから、どのようにオルカンの誕生へたどり着いたのでしょうか?
当時は、海外の運用会社が日本に新しい潮流を持ち込み始めていた時代。彼らが主流としていたのは、特定の銘柄を選ぶのではなく、市場全体に投資してその成長に乗る「パッシブ運用(インデックス運用)」でした。プロの世界ではすでに、その低コストで合理的な仕組みが大きな流れになっていたんです。私はそれを見て、「今後一般個人にもアクティブ運用からパッシブ運用への流れが起こる」と感じました。そんな折、個人が利用する「投資信託」を扱う会社へ異動したのです。
ところが、当時の商品は、個人の資産形成を進めるには手数料が高く、高い分配金を謳ったものばかり。これが業界の常識として定着していることにかなり違和感を覚えました。そこで無分配かつ低コストで長期投資に向くパッシブ運用の商品を提案することにしたのです。
なにせ売れ筋でなく収益性が低いという意味で常識を覆す提案ですから、正攻法では会議で役員に反対されるのが目に見えている。そこであえて事前の根回しを最低限にして、会社の進むべき姿についての問題提起になるような提案にしました。会議は紛糾し、再審議を重ねることになりましたが、参加しているメンバーが、どんな企業像や未来を描いているのか聞いてみたいと、議論の行方を客観的に見守っている自分もいました。信念を貫いてブレイクスルーするには、時に組織の空気を読まない"図々しさ"も必要だろうと。ただその無鉄砲さの一方で、会社の将来についての一つの可能性を提示することで、閉塞感を抱いていた社員からの支持を得ようと、丁寧に進めていた部分もあったんです。そして最後は社長が「1兆円を目指して、みんなやってみようよ」と背中を押してくれました。
若手から事務方まで、多くの人の協力を経て前へ進む
ー代田さんは強力に信念を貫いてきたわけですが、反対意見などをどのように乗り越えてきたのでしょうか?
ここまでの話ですと私が独走しているようにも見えますが、実はたくさんの方に支えられていました。何事も一人ではできません。当初、全体としては賛否両論あったものの「お客さまから長く支持され続ける投資信託を作って世の中を変えていこう」という若手がついてきてくれました。それに投資信託の設計図を作るメンバー、実際に個別銘柄を売買して株のポートフォリオを作るファンドマネージャー、投資信託を販売会社に提供する営業担当者、そして日々基準価額を計算するバックオフィスなど、目立たない場所で屋台骨を支える人たち一人ひとりの協力があって、投資信託を送り出すことができたのです。

また、私たちが推進したパッシブ運用は「投資のプロの仕事を軽視する商品」と見なされることもありましたが、決してそうではないことも伝えていきました。企業業績などを踏まえて売買を行うことで市場の価格発見機能の役割を果たしているプロのアクティブ運用者は不可欠です。ただ、投資初心者を含め「すべての人をそこに巻き込む必要はない」と考えていただけなのです。
パッシブ運用は「まず市場について理解する」のに向いています。市場に身を置くことで、投資したお金が増えたり減ったりすることを経験するのは、長期投資を行っていくうえでとても大切なことです。そして数年パッシブ運用を続けて、市場の動きがわかってくると、もっと儲かるファンドや銘柄があるのではないかと、ファンド・銘柄選びへ興味・関心が湧いてきます。それは自然な流れです。
分散とは「外へ出て探す」ことではなく、「足元を観察し気づく」こと
ー働き手が今、一つの会社に留まるリスクを感じ、多様な経験を積む分散型キャリア「ポートフォリオ・キャリア」へ移行しているというデータがランスタッドの働く意識調査「ワークモニター2026」で明らかになっています。 分散投資と同様の傾向とも見えますが、代田さんから見てスキルの分散はどう映りますか?
投資の世界でも分散は「不確実な将来に備えるための構え」ですが、ただ闇雲に分ければいいというものではありません。投資の分散(パッシブ)が「市場全体を信じる」ことを軸としているように、大事なのは「思想としての軸」があるかどうかです。
キャリアも同じで、ただ「おもむろに転職する」「おもむろに副業を始める」だけでは意味のある分散にはならないんじゃないかなと。「自分はどういう価値を提供して、誰を幸せにしたいのか」という軸を見極める必要があります。
ただ、新しい自分、新しいスキルを外へ出て探す必要は必ずしもないんです。今の環境で「ものの見方」を少し変えるだけで、ルーチンワークすらも新しい発見に満ちたものに変わります。例えばコピー取りだって、裏表を間違えてしまうような「初級」から、書類の内容を把握してコピーの次に必要なものを先回りして手配できる「黒帯」まであるだろうと。その小さな"気づき"の積み重ねが、自分だけの揺るぎないポートフォリオになるはずです。
もちろん「場を変えて分散するべき」局面もあると思います。でも、今の環境を多角的に見ないまま、「場所が変われば自分が変わるはず」と表層的に転々としていたら、延々と場を変え続けることになりかねません。
AI時代のリーダーシップ----面白い未来を期待させる存在であること
ー「ワークモニター2026」では、日本の働き手は世界と比べてマネージャーとの信頼関係が格段に低いという結果が出ています 。Z世代に至っては半数近くが「マネージャーよりAIに相談する」と回答しています。判断や管理がAIに置き換わる時代、リーダーに残された役割とはどのようなものになっていくのでしょうか。

「この人についていけば、面白いことが起きそうだ」と思ってもらえる人物であることでしょうか。不確実性の高い世の中で、部下に何かを100%保証することはできない。反面教師にはなれますが、他にできることは夢を語ることくらい。 そこでしか引っ張れなかったと思っています。
当時、反発に遭いながらも「オルカン」という夢を一緒に育ててきた仲間たちには、お客さまに長く愛される商品を作ることで、世の中を変えたいという共通の思いがありました。彼らとは今もときどき集まっていて、みんなそれぞれの道で活躍しています。それだけ熱い「思い」のある人材があの時「面白そうだ」と集まってくれた。
AIと会話するだけでは「生きる意味を見いだすこと」や「楽しく生きること」はできませんよね。だからこそ、リーダーは「この人と一緒にいれば、何か面白いことをやってみたい」と思わせる存在であるべきかなと。
一人の「熱」が、社会のインフラになるまで
一人ずつ周囲の協力を取りつけるところから始まった代田氏のプロジェクトは、今やSNSで「俺たちのオルカン」と親しまれる社会インフラになりました。一人のビジネスパーソンの「違和感」と「熱量」が、時間をかけて多くの人の信頼へと変わっていったのです。キャリアの正解を外へ出て探すのではなく、目の前の仕事に向き合い、自らの覚えた違和感を信じて、仲間を巻き込み夢を形にする。そのプロセスそのものが、AI時代に私たちが生きる意味になるのかもしれません。
代田氏のお話の通り、「思想の軸」を明確にすることは、納得感のあるキャリアを築くための第一歩です。ご自身のキャリアをどう作り上げていくか、お悩みの方はぜひキャリアの専門家であるランスタッドのコンサルタントにご相談ください。
また、最新の世界基準のスキル動向やキャリア形成の潮流を知り、「世の中にどんな価値を提供できるか」をより深く考えるきっかけとして、世界基準の労働意識調査「ランスタッド・ワークモニター」もぜひご活用ください。

株式会社シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズ
代表取締役社長 代田 秀雄氏
1985年、三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社。年金運用業務などを経て、三菱UFJ投信(現三菱UFJアセットマネジメント)へ。国内最大級のインデックスファンド「eMAXIS Slim」シリーズの生みの親であり、日本におけるインデックス投資の普及を牽引。同シリーズは、累計運用残高24兆円超(2026年現在)という巨大な社会インフラへと成長した。中でも「全世界株式(オール・カントリー)」は、投資家から「オルカン」の愛称で絶大な支持を集めている。2019年より同社常務取締役を歴任し、2025年に現職を設立。現在は「投資とウェルビーイングの融合」を掲げ、個人の資産形成を支援する活動を幅広く展開している。
【主な著書】
『オルカン思考 世界経済を味方につける「長期投資」の教科書』(Gakken) ※2026年4月刊
【主なメディア掲載・出演】
読売新聞オンライン:「50代からでも遅くない、資産運用は気づいた時から...青木さやかさんと学ぶマネーライフ」(2026年)
YouTube:「PIVOT 公式チャンネル」「文藝春秋PLUS 公式チャンネル」等、多数の専門メディアに出演。
受賞歴:「個人投資家が選ぶ! Fund of the Year(旧・投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year)」にて「全世界株式(オール・カントリー)」が前人未到の連覇を達成。
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