「オランダの労働市場改革」に関する勉強会、日本記者クラブ主催  バルケネンデ元蘭首相とCiettのムンツ会長ら登壇

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2015/10/16

日本記者クラブは14日、東京都千代田区の日本プレスセンターホールで、労働市場改革をテーマに勉強会を開いた。在任中に労働改革と社会保障改革に注力したヤン・ペーター・バルケネンデ元オランダ首相=写真右=と、世界最大級の総合人材サービス「ランスタッド・ホールディング」幹部で国際人材派遣事業団体連合(Ciett)のアンネマリー・ムンツ会長=写真=らが登壇。経験則に基づき、それぞれ戦略的な雇用改革の必要性を官と民の視点から披露した後、記者の質疑に応じた。

日本とオランダは、高齢化と社会保障増大という成熟経済の重大な課題を抱えており、これらの問題を解決する上で最も重要なカギが「労働市場や働き方の改革」となっている。経済協力開発機構(OECD)によると、労働市場の規制緩和や構造改革は雇用活性化のプラス面をもたらす一方で、一時的な失業率の上昇などの副作用を生む可能性もあり、困難な面も持ち合わせているという。オランダが進めた21世紀に入ってすぐに着手した労働改革の道は、労働市場の流動性の向上、ビジネスの国際化、女性の就業率の向上など、成功例として日本の労働改革の参考になる政策があり、今回、両氏を招いた勉強会が開催された。

はじめに、OECD東京センターの村上由美子所長が両氏の主張の理解をより深める前段として、「オランダと日本の比較統計」を紹介。一人当たりのGDPや男女別の雇用率、平均実労働時間、パートタイム雇用率などをグラフを用いて明瞭に説明した。

続いて、2002年から10年の8年間にわたり、労働改革に精力的に取り組んだバルケネンデ元首相は、年金など手厚い社会保障が財政を圧迫していた1990年代のオランダの状況を解説し、この社会保障改革の着手と「雇用の流動性の促進」が連動していたことを強調。「改革は難しいが、先送りするとさらに困難になる。改革への信念と国民に向けた展望ある説明が不可欠」と力説した。

ムンツ氏は、若者の失業率がピークを迎えていた1980年代半ばに大学を卒業し、就業が困難だった自身の体験を交え、派遣という働き方を入り口にスキルアップしていく方法と必要性をとなえ、「一定の法規制を設けながらも、柔軟性のある有効な制度として官民一体となった雇用促進へさらに連携していくべき」と主張した。

この日は、日本経済新聞論説副委員長兼編集委員の実哲也氏が司会を務め、労使関係のあり方や教育訓練の望ましい形、正規と非正規に関する日本とオランダの認識の違いなどについて、両氏と記者が質疑を交わした。

配信元:アドバンスニュース

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