扶養内で働くための年収の壁とは?年収の壁には何種類ある?
アルバイトやパートなどで働く場合には、「扶養内で勤務するためには年収をどのくらいにすればいいのか」と悩んでしまうことがあります。そのボーダーラインのことを「年収の壁」と呼びますが、年収の壁にはいくつか種類があり、働き方や考え方によって意識しなければならない年収の壁が異なります。
本記事では扶養内勤務を希望する人に知ってもらいたい「年収の壁」の種類と、その内容をご紹介します。働き方を考える際の参考にしてください。
扶養内で働くとはどういうこと?
年金や健康保険といった社会保険のルールや税金の仕組みにおいて、「被扶養者」として働くことを「扶養内勤務・扶養内で働く」と言います。扶養内で働くと社会保険料や税金の負担を抑えることができるため、扶養内勤務を希望する場合には、所定の年収を超えない働き方を選択しなければなりません。
扶養内で働くとどんなメリットがある?
扶養範囲内で働くメリットは、社会保険料や税金の負担を抑えられることです。
社会保険料(年金・健康保険) | 一定の年収を超えるまでは社会保険に加入しなくてもいい |
税金 | 一定の年収を超えるまでは住民税や所得税が課税されない 一定の年収を超えるまでは配偶者控除、または配偶者特別控除を受けられるため税金の負担が減る |
たとえば、会社員の夫の妻が扶養内で働いていると、年金や健康保険といった社会保険に加入する必要がないことから、社会保険料の負担を抑えることができます。税金については配偶者控除、または配偶者特別控除を受けられるため、夫の税金の負担が軽減されます。所得税や住民税は扶養に関係なく、妻の年収に応じて課税されますが、一定の年収を超えるまで課税されません。
なお、夫が個人事業主の場合、妻は夫の社会保険の扶養に入ることができません。自身で国民年金と国民健康保険に加入するか、妻の勤務先の社会保険に加入することになります。税金については夫が個人事業主でも配偶者控除、または配偶者特別控除を受けられます。
扶養内で働くとどんなデメリットがある?
扶養範囲内で働くと、扶養から外れて働くより年収が少なくなるため、世帯収入が少ないことはデメリットになるかもしれません。また、扶養から外れて社会保険に加入すると、将来受け取る年金の額が増える・傷病手当※の対象になることから、こうした社会保険の恩恵を受けられないのはデメリットになるでしょう。
※傷病手当とは
健康保険に加入している人が受けられる制度で、病気やケガで会社を休み、勤務先から十分な給料が支払われない場合に手当が支給されます。なお、国民健康保険に傷病手当はありません。
扶養内で働くことのメリット・デメリットは、以下の記事で詳しく紹介しています。あわせて確認してみましょう。
●扶養内勤務?フルタイム?迷ったときに整理したい扶養内勤務のメリット・デメリット
扶養の範囲で働くための「年収の壁」とは?
社会保険や税金のルールにおいて、扶養が認められる年収の上限額を「年収の壁」と呼びます。年収の壁にはいくつか種類がありますので、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
100万円の壁とは?
100万円の壁は、市民税や県民税といった住民税が「課税される・課税されない」のボーダーラインです。
住民税は、年収が「給与所得控除(最低55万円)」と「住民税の非課税限度額(45万円)」の合計額100万円を超えると課税されます。ただし、住んでいる市区町村によっては、年収が100万円以下でも住民税が課税される場合があります。住んでいる市区町村の窓口に尋ねておくといいでしょう。
住民税※ | 壁を超えると課税される |
所得税・復興特別所得税 | 非課税 |
社会保険※※ | 必要なし |
配偶者控除 | 対象 |
※住んでいる市区町村によっては年収が100万円以下でも住民税が課税される場合があります
※※扶養者が個人事業主の場合、社会保険の扶養に入ることができません。
103万円の壁とは?
103万円の壁は、所得税と復興特別所得税が「課税される・課税されない」のボーダーラインで、扶養者(会社員として働いている夫など)が受けていた配偶者控除が、配偶者特別控除に切り替わるボーダーラインにもなります。
所得税と復興特別所得税は、年収が「給与所得控除(最低55万円)」と「基礎控除(48万円)」の合計額103万円を超えると課税されます。
また、配偶者控除は扶養者の合計所得(年収から給与所得控除などを控除した金額)が1,000万円以下の場合に適用され、扶養者は最大で38万円の控除を受けられます。一方、被扶養者(会社員の妻など)の年収が103万円を超えると配偶者特別控除に切り替わり、扶養者は1万円~38万円の範囲内で控除を受けられます。
住民税 | 課税 |
所得税・復興特別所得税 | 壁を超えると課税される |
社会保険※※ | 必要なし |
配偶者控除 | 壁を超えると配偶者特別控除に切り替わる |
※※扶養者が個人事業主の場合、社会保険の扶養に入ることができません。
106万円の壁とは?
106万円の壁は、勤務先の規模や働き方によって社会保険(厚生年金や健康保険)に「加入する・加入しない」のボーダーラインになります。
パートで働いている場合でも、年収が106万円を超えると、勤務先の規模や働き方に応じて社会保険への加入が義務付けられます。加入条件は2024年10月から変わりますので、該当しそうな場合には、事前に勤務先に確認しておくといいでしょう。
2024年10月以前 | 2024年10月以降 | |
勤務先の規模 | 従業員数101人以上の企業 | 従業員数51人以上の企業 |
働き方 | ・週の所定労働時間が20時間以上 ・月額賃金が8万8,000円以上 ・2カ月を超える雇用見込みがある ・学生ではない |
住民税 | 課税 |
所得税・復興特別所得税 | 課税 |
社会保険※※ | 勤務先の規模・働き方によって加入が必要になる |
配偶者控除 | 対象 |
※※扶養者が個人事業主の場合、社会保険の扶養に入ることができません。
130万円の壁とは?
130万円の壁は、勤務先の規模にかかわらず、自分で社会保険に「加入する・加入しない」のボーダーラインになり、勤務先の社会保険に加入するか、自身で国民年金と国民健康保険に加入しなければなりません。
年収が130万円を超えると社会保険に関する扶養から外れ、保険料の負担が大きくなります。130万円の壁を超えそうな場合には、支払う保険料以上に収入を増やすなど、働き方を考えるといいでしょう。
住民税 | 課税 |
所得税・復興特別所得税 | 課税 |
社会保険 | 壁を超えると自分で加入する必要がある |
配偶者控除 | 対象 |
150万円の壁とは?
150万円の壁は、扶養者が受けていた配偶者特別控除の控除額が「段階的に引き下げられる」ボーダーラインになります。
103万円の壁を超えたタイミングで配偶者控除が配偶者特別控除に切り替わっています。しかし、実際の控除額は150万円の壁を超えるまで配偶者控除と同額の38万円で、150万円の壁を超えると控除額が段階的に引き下げられます。
住民税 | 課税 |
所得税・復興特別所得税 | 課税 |
社会保険 | 加入が必要 |
配偶者控除 | 対象だが、壁を超えると段階的に控除額が減る |
201万円の壁とは?
201万円の壁は、扶養者が受けていた配偶者特別控除の控除額がゼロになるボーダーラインです。すでに外れていた社会保険の扶養に加え、税金の面からも完全に扶養から外れます。
住民税 | 課税 |
所得税・復興特別所得税 | 課税 |
社会保険 | 加入が必要 |
配偶者控除 | 壁を超えると対象から外れる |
世帯としてのメリットを考えて自分に合った仕事を探そう
年収の壁にはいくつか種類があり、それぞれの考え方や置かれている環境によって、ふさわしい働き方が異なります。子育てなどで忙しい場合には扶養の範囲内で上手に働き、時間や労力に余裕ができたら扶養内勤務にこだわらずに働くなど、世帯のメリットを考えながらふさわしい仕事を探すといいでしょう。
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