【例文付き】上手な仕事の断り方とは?断れない心理と断るポイントをコミュニケーションのプロが解説
※この記事は、2017年6月15日に執筆し、加筆・修正を加えたものです。
「上司や取引先に依頼されると、つい断れずに引き受けてしまう...」ということはありませんか?
無理な依頼を引き受けてしまうと自分の本来の仕事ができず、成果も出せないなど、負のスパイラルに陥ってしまいがちです。
そこで、断れない裏側にある心理を探りながら、人間関係を良好に保てる上手な断り方と例文をご紹介します。
今日から、勇気を出して断る力を身につけてみませんか?
断りたいのに断れない心理とは?
「あ~、なんで引き受けちゃったんだろう...あの時断っていれば...」と後悔をした経験はありませんか?
断るのは一瞬で済むのに、引き受けたばかりに長期間その仕事にかかりっきりになり、さらにはストレスまで抱え込むはめになることも。
では、断りたいのに断れないのはなぜでしょうか?あなたはどのタイプか考えてみましょう。
- ・仕事ができる人だと思われたい
- ・良い人だと思われたい
- ・簡単に終わる仕事だと思った
- ・断ると人間関係がギクシャクしそうで怖い
- ・格好良く見せたい
- ・頼んだ人に借りがある
- ・頼られること自体が嬉しい
- ・そもそも断り方がわからない
なぜ断ることが大事なのでしょうか
すべての依頼ごとに応えられれば素晴らしいですが、あなたの体はひとつしかありません。時間や体力は無限ではありませんから、時には断ることも大切です。
軽い気持ちで引き受け、期日までに相手が期待する成果を出せなかったらどうでしょうか?あなたの信用に傷がつきます。一度壊れた信用を回復するのは容易ではありません。
ビジネスシーンで「断る力」を身につけると信用に傷をつけることもなくなるばかりか、このようなメリットがあります。
断る6つのメリット
(1)仕事の優先順位がつけやすくなる
断ることが苦手な人は、次から次へと仕事に追われ何から手をつけたら良いかわからなくなることが多々あります。特に、自身のスケジュール管理が苦手な人ほど仕事を抱え込み、最後は中途半端に終わらせることも。
- A.自分にしかできない仕事
- B.他の人でもできる仕事
- C.空き時間を使ってできる仕事
と、優先順位をつけることで効率的に仕事を進められます。
(2)仕事のクオリティが上がる
一番クオリティの高い仕事はどれだと思いますか?
- 1.締め切り直前の仕事
- 2.締め切りまでに時間的余裕のある仕事
- 3.締め切りのない仕事
答えは、2の「締め切りまでに時間的余裕のある仕事」です。
締め切りまでに時間的余裕のある仕事は、じっくりとプランを考えて練り直し、丁寧に資料を作成し、それを確認する時間もあるので、おのずとクオリティが上がります。
では、他の2つはなぜクオリティが低くなるのでしょうか?
まず、1の「締め切り直前の仕事」です。
例えば、明日締め切りの仕事の場合、あなたが一番意識するのは時間でしょう。とにかく締め切りに間に合わせなくてはという焦りから、プランを練り「形」にすることに集中してしまいます。「形」にすることが目標ですから、プランの練り直しや資料の確認作業が疎かになりがちです。期日は守ったものの内容が乏しかったりケアレスミスがあったりと、全体のクオリティは下がってしまいます。
次に、3の「締め切りのない仕事」は、どうでしょう?
締め切りがないということは、いつでも良いということです。上司から「手が空いた時でいいから」と言われ、ほったらかしていたら「まだできていないのか」と叱られた経験はありませんか?期日がないものは、優先順位が下がるので「しない」可能性すらあるのです。締め切りのない仕事は、先に述べた「C.空き時間を使ってできる仕事」に分類し、隙間時間に終わらせるか、自分なりの期日を設けておくと良いでしょう。
(3)ストレスが軽減する
「あの時、断っていれば...」と思いながら仕事をするのは辛いものです。進捗が芳しくないとつい「〇〇さんがこんなことを頼むから」と、引き受けたのは自分なのに責任転嫁してみるなどマイナスオーラ全開でストレスが溜まる一方です。断ることでマイナスオーラの原因をなくして、ストレスを減らしましょう。
(4)結果としてチームの成果も上がる
(1)~(3)で述べたとおり、一人ひとりが主体的に心に余裕をもって仕事に取り組むとチームとしての成果も上がります。
(5)人間関係のトラブルを防ぐことができる
安易に引き受けたことで一時的に良好な関係は保てても、相応の成果が出なかった場合は気まずい状態が続き関係性が悪化することもあります。できない時には断ることで、良好な人間関係を継続できます。
(6)信用に繋がる
依頼した相手は当然ながら、相応の成果をあなたに期待します。しかし応えられなかった場合、あなたは一気に「仕事ができない人」認定されてしまいます。時には、それが周囲へあなたの評判として伝わるかもしれません。依頼を断ることで、逆にあなたの信用がアップすることもあります。
良好な人間関係を保ったまま上手に断ろう
「断る力」の大切さは理解いただけましたか?
「なるほど、はっきり断ればいいのね!」と思ったあなた、ちょっと待ってください。確かに断ることは大切ですが、なんでもかんでも「できません」と断ればいいわけではありません。なぜなら、あなたが困った時に助けてもらえない可能性が出てくるからです。仕事をしていればお互い様の時もありますから、上手な断り方を覚えて、人間関係を良好に保ちましょう。
断り方の3つのポイント
それでは、断れない時の心理と、断る重要性がわかったところで、上手に仕事を断るポイントを確認して行きましょう。
(1)まずは謝罪をする
相手は、あなたならこの仕事を引き受けてくれる、きちんと遂行してくれると期待をしています。その期待に応えられないのですから、まずは感謝とお礼の言葉とお詫びの気持ちを伝えましょう。
「申し訳ございませんが」「せっかくお声をかけていただいたのですが」「申し上げにくいのですが」などのあとに「ご期待に沿えず申し訳ございません」と言います。
(2)できない理由を説明して断る
続いて、できない理由を簡潔に述べます。現状を詳細に伝える必要はありません。「仕事が立て込んでおります」「その件については、私はあまり知識がありませんので」など、相手が状況を理解できれば大丈夫です。断る時は、もしかしたら引き受けてくれるのかも......と誤解を招くようなあいまいな表現は避けます。
(3)代替案を提示する
断りの理由を述べただけでは、相手は拒否された印象が強く残ります。そこで代替案を提示しましょう。
「来週以降でよろしければお引き受けいたします」、「他に対応できる者がいないか確認してみます」「次回はお引き受けいたしますので」など、代替案を一言添えるだけで印象が良くなります。
上手な断り方の例
上記のポイントを踏まえて、断りメールの書き方にも活用できる具体的な断り方の例文をご紹介します。
上司への断り例文
〇〇課長
お疲れ様です。先ほどご相談いただいた△△△の件なのですが、お声がけいただきありがとうございました。あいにく今週はクライアントへのプレゼン準備に追われておりますのでお引き受けできず申し訳ございません。もし来週以降でも可能ということであれば、スケジュールを調整いたします。よろしくお願いいたします。
他部署の上司の場合
(他部署)××部
〇〇課長
お疲れ様です。先ほどはありがとうございました。ご依頼いただいた△△△の件なのですが、今週は部署内の会議が立て込んでおりまして、××部のお手伝いができない状況です。
申し訳ございません。〇〇課長からご依頼いただいた件は、私から(直属の上司)■■課長に申し伝えますので、次回は■■課長へもご連絡いただけますでしょうか?次回はお手伝いできるよう努めますのでよろしくお願いします。
取引先への断り方
〇〇様(役職)
お世話になっております。先ほどはお問い合わせいただきありがとうございました。スケジュールを確認いたしましたところ、あいにく期日には間に合いませんので、よろしければこれから申し上げる日時で調整いただけませんでしょうか。(候補日を伝える)お急ぎのところ申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。
いかがでしたか?頼まれるとつい引き受けてしまうことがありますが、できないと判断したらはっきりと断ることもお互いのためにも大切です。そして次回、引き受ける際は笑顔で気持ちよく対応することが相手との良い関係を継続するコツです。
ライタープロフィール
篠原あかね
研修講師、イベントコンサルタント
(株)リクルートで研修アシスタント、秘書を経て、研修講師として活動。強い組織創りの人材育成トレーニングを各企業で行う傍ら、自身の宴会幹事経験で得た「宴会も仕事も求められるスキルは一緒」であることを体系化した「愛される宴会部長セミナー」も開催。テレビ・雑誌など各メディアでマナーや宴会に関するコメンテーターとしても活動中。