ダイバーシティ・マネジメントとは?

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2021/11/11

ダイバーシティやダイバーシティ・マネジメントという言葉を最近良く耳にしませんか?何となくは分かっていても、その本当の意味、目的やメリットなどよくは分からない方も多いのではないでしょうか?
近年「ダイバーシティ(多様化)」は企業の成長にプラスになるということで、国内各地で研修やセミナーが開催されるほどに注目を集めており、導入事例や成功例、そして海外での実情などが紹介・レクチャーされています。
ダイバーシティ・マネジメントの根底にあるのは、人種、性別、年齢などの表向きの違いだけではなく、宗教、言葉、社会的背景、考え方、性格などの内面も含めた、多様な個々の「違い」を受け入れることが企業や組織にとって大きなプラスになる、という考え方です。それでは歴史から導入のステップまでを詳しくみていきましょう。

「ダイバーシティ・マネジメント」の意味とは?

多様な社員の違いを受け入れ、戦略的に活かすことで企業やチームの生産性やパフォーマンスの向上を図ることが、ダイバーシティ・マネジメントです。それが企業の経営のテーマになった経緯や歴史、目的、メリット、そしてどのように実際に運営されているのかといった導入方法や成功例を見てみましょう。

◆歴史

1960年代にアメリカで反人種差別運動である公民権運動が活発になり、公民権法が制定されました。また、ウーマンリブ運動が高まり、国連では女子差別撤廃条約が制定されました。こうした社会の流れを受け、法令順守や訴訟リスクのマネジメントの観点から、企業は人種や性別による差別をなくす方向に動き出しました。日本でもその流れを受け、1985年には勤労夫人福祉法がいわゆる「雇用機会均等法」に改正されました。

1980年、90年代になると企業のグローバル展開に伴い、海外市場で売れる商品やサービスを提供するために、多様な文化や生活スタイル、趣味嗜好などを受け入れる必要が出てきました。

また、昨今では出生率の低下から少子高齢化が話題になり、企業にとってはシニアや女性の戦力化が課題となってきました。 こうしてダイバーシティ・マネジメントの流れが加速してきました。

◆目的

過去の歴史にあるように、最初は訴訟などのリスクマネジメントから始まりましたが、近年ではグローバル市場対応も目的の一つとなりました。海外市場や多様化する消費者ニーズに対応するために、企業が組織としてグローバル化を進め、多様な価値観を理解していくことが重要な経営課題となります。異なる文化背景、習慣、宗教などを持つ人を含む、組織同士の提携や合併も日常茶飯事となってきました。

また、少子高齢化の進む中では、さまざまな働き方や事情、個性を持つ人を戦力化することが必要になってきます。人材確保もダイバーシティ・マネジメントの目的と言えます。

◆効果

これらの目的を達成することで、企業にとっては人材確保や定着率の向上、新しい視点での商品やサービスの開発、市場開拓などによる、ビジネスでの競争優位性を得ることができます。

◆成功のポイント

組織内の円滑なコミュニケーションがポイントとなります。今まで一緒に働いたことのないタイプの人のことを理解し受け止め、その人の強みを伸ばすことで、チームとして、会社として強くなっていくのです。

上司部下の縦の関係においては、特に入り口で「この人は難しそうだ」と思うのではなく、同じ船に乗って目標に向かう仲間として、それぞれの違いをむしろ活かすことを考え、相乗効果を出していくよう心がけてみるとよいでしょう。

同僚同士の横の関係では、同じような状況の者どうしの方がやりやすいこともあるでしょう。しかし、同じ人種・性別の同僚であっても、考え方や育ち方、境遇が全く同じである人はいません。そこには必ず違いがあります。したがって、集団や組織において自然に意識している「相手を尊重し、相手の立場に立ってコミュニケーションする」ことを、今まで一緒に働いたことのないタイプの人とも、同じように行えばよいのです。


ダイバーシティ・マネジメントが企業の経営課題となった経緯を知ることで、その重要性が見えてきたと思います。異なる個性を受け入れることで、市場を開拓したり新たな付加価値を創造したりすることが可能となり、ビジネスチャンスが広がると言えます。

成功事例

それでは具体的なダイバーシティ・マネジメントの事例をいくつか見てみましょう。海外の方が取り組みとしては先行していますが、日本企業の中にも少しずつ定着してきています。経済産業省では、さまざまな規模や業種の企業における取り組みをベストプラクティスとして発信する「ダイバーシティ経営企業100選」事業を実施しています。

【1】株式会社KMユナイテッドの事例

平成27年度に100選に選ばれた同社は、建設業界において、若手の女性職人の受け入れを通じて、教育体制の確立や全社に通じる職場環境の整備を実現しています。そのことが、より高付加価値の施工を受注することにつながっています。

【2】KDDI株式会社の事例

経済産業省の「なでしこ銘柄」(女性活用を積極的に行う上場企業)の指定を受けている同社は、個々の社員の積極的な挑戦を促進し、聴覚障がいを持つ社員の接客の現場での活躍を通じて、サービスの向上を実現しています。

【3】本多機工株式会社の事例

留学生の採用や管理職登用により外国人社員の活躍の場を作り、海外代理店網の充実や海外エンドユーザー向けのサービス向上につなげています。


ご覧いただいたように、ダイバーシティ・マネジメント推進に真摯に取り組み、さまざまな属性の従業員が働きやすい職場環境を整えることで、経営にプラスになっている事例が多数あります。

ダイバーシティ・マネジメントを学ぶ

企業によっては社内でダイバーシティに関する研修を行っているところもあります。また、個人で参加する研修やセミナーとして、例えば公益財団法人日本生産性本部では「ダイバーシティ・カレッジ・プログラム」の中で対象別にさまざまな研修を提供しています。

 

いかがでしたか。ダイバーシティ・マネジメントのテーマは、性別や人種に関することだけではありません。年齢、国籍、身体条件やライフスタイルの異なる人がお互いを理解しあい、同じ目標に向かって進んでいくチームの運営なのです。多様な人々が気持ちよく、やりがいを持って職場で輝ける環境を実現することが、ダイバーシティ・マネジメントの成功といえるのではないでしょうか。

尚、多様な人材を活用したい企業の「働き方改革」に向けた実現方法を「ダイバーシティ・マネジメントで「働き方改革」を実現しよう」でご紹介していますので、こちらもあわせてご覧ください。

*本記事は2016年11月11日に公開した内容を再編集して掲載しております。

ライタープロフィール

遠藤 美穂子
国家資格キャリアコンサルタント。2級キャリアコンサルティング技能士。
14年間の都市銀行勤務を経て、キャリアコンサルタントとして活動開始。ハローワークでの研修講師や、ビジネスマナー指導、大学でのキャリア教育や就職指導を担当。講演のほか、書類の添削や面接でのロールプレイングなど実践的指導も行う。国際文化会館主催の次世代リーダー育成プログラム、新渡戸国際塾一期生。2児の母。
株式会社近代マネジメント

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