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男性も解放する女性活躍促進 ダイバーシティ&インクルージョンが目指す自己実現の場とは?

村松 栄子人事本部 ダイバーシティ&インクルージョンマネージャー

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profile
山口県出身。横浜国立大学大学院修了(経営学修士)。日系企業で人事業務全般を経験後、外資系企業でダイバーシティ&インクルージョンと社内風土改革を担当。2020年5月ランスタッド入社。女性活躍推進や性的マイノリティのインクルージョンに取り組む。

誰でも自分に合う形で幸せな人生を選べるように

横浜の外資系企業で働いた後、家庭の事情で静岡に転居した村松栄子。日系の物流会社で人事として働いた経験が、エクイティ、ダイバーシティ&インクルージョン(ED&I)に取り組みはじめるきっかけでした。

 

180度カルチャーが変わってすごくびっくりしたんです。女性の管理職が全然いなかったし、女性社員は妊娠したら会社を辞めるものとだいう空気がありました。本人が仕事を続けたいと思っても、上司が残って欲しいと思っても、妊娠したら辞めるのが前提。なんだこれはと思い、人事の立場で草の根的に活動をはじめました」

 

ライフステージが変化しても働き続けられるように。まずは子どもがいる女性のネットワークを作ったり、当時非常に少なかった「女性総合職」が管理職を目指すためのワークショップを開いたり。まだ「ダイバーシティ」や「インクルージョン」という言葉が一般的ではない時代の活動でした。

 

その後、東京に転勤となった村松。より専門的に取り組みたいという思いから、外資系保険会社のダイバーシティ専任担当者を経て、ランスタッドへ入社しました。

 

社員に向けた施策だけでなくて、ED&Iの推進を通じてクライアントやビジネスの現場に役立つことができる。人材サービス会社でED&Iに携われるのは私にとっては魅力です

 

村松がED&Iを推し進めるもう一つの理由。それは女性のためよりも「男性を解放したい」という思いからでした。一家の大黒柱として働く村松は苦手な家事は夫に任せ、ここまでキャリアを築いてきたのです。

 

「夫は専業主夫の時期もあり子どもが小さいうちは短時間のパートで働いていたので、料理やスポーツなど彼自身が好きなことにも時間を使っていました。夫がとても幸せそうな感じがすごく良くて。男性だって、大黒柱の責任やいわゆる甲斐性みたいなところから離れた方が幸せな人も絶対いると思っています」

 

絶対に出世コースから外れられない、自分が家族を養わなければという責任、他人の目……。「男」ということに縛られ苦しんでいる男性が、世の中には多くいると村松は感じています。それは決して幸せな在り方ではないはずです。

 

私は女性の活躍推進で男性の解放をしたいと思っています。全員が出世を考えたいわけでもないし、自分がそこに合う形で社会に参加していけばいい。誰でも自分に合う形で人生を生きていけるし、人生に満足する人を一人でも増やしたいですね」

誰にとっての「公平、多様性、受容」か

前職の時の写真。車いすを体験する村松。

取り組みは女性活躍推進だけではありません。すべての人が自分らしく生きられるよう、LGBTQを支援するNPO法人 東京レインボープライドのイベントに参加したり、社内の就業規則を整えたり、障がい者の雇用を促進したり。 社員のネットワークグループの立ち上げやサポート、関連プロジェクトのリードなどを精力的に行う村松。しかし高い理想を掲げるからこそ、そこには必然的に難しさが伴います。

 

ED&Iの施策への反発は基本的にはデフォルトだと思っています男性社員から見れば女性をえこひいきして自分たちに不利な施策をしようとしている。女性自身も『今まで通りに働いていたい』『そっとしておいてほしい』と思う方も多い。マネジメント層は業績が犠牲になるのでは、と総論賛成各論反対ということもありますね」

 

誰にとって“良いこと”をやっているのか? それが分からなくなることもあるという村松。それは自分との戦いでもあり、孤独な取り組みでもあります。

 

「だからこそ会社として必要かどうかの前に、自分にとって意義があるか、自分を納得させられているかが、一番重要かなと思っています。ランスタッドは「人材と組織の真の可能性を引き出すこと」をパーパスに掲げているんですけど、私もまったく同じことを考えていて。ED&Iはビジネス上の選択肢を広げると思っているので、業績とコンフリクトすると思ってないんです。やり方次第で業績の向上や組織の成長にもつなげられる確信がありますね。特に今のランスタッドでは、ED&Iへの経営層の強い支援もあるので心強いです。」

 

大切なのはオープンなコミュニケーション。そして「正しさの押し付け」や「良いか悪いか」ではなく、「違いが何か」を明らかにすることだと村松は言います。

社内意識の高まりと日本社会への発信

Tokyo Rainbow Prideのプロモーションで集まったプロジェクトメンバーとCEOのポール(左から3人目)とCHROのヨス(左から4人目)と一緒に。

ビジネスの現場では、まだ体現できてないことの方が多いと思う。先日も国際女性デーのイベントを行いましたが、外部に発信すればするほど『言ってることとやってることが違うじゃないか』と言われるリスクが高まります。ただそれでも、自分たちの課題を認識して取り組んでいることを合わせて発信すれば、もがきながらも進もうとしていることが伝わると思っています」

 

社内では、社員の自発的なネットワーク「Employee Resource Group(ERG)」の活動も活性化しています。社内でのED&Iの理解を深めるグループで、四半期ごとに勉強会やディスカッションを開催。国際女性デーのイベントもERGの主催によるものでした。

 

「トップダウンの取り組みもありますが、ERGはボトムアップの活動。聴覚障がいの方々のERGが自主的に立ち上がって情報共有が進んだり、最近では発達障害を理解する『ニューロダイバーシティ』のERGが発足しました」

 

ランスタッドは日本においてED&Iに積極的な取り組みをしている企業の一つではあるものの、日系企業の担当者と会話をしていると、まだまだ課題が多いと村松は言います。

 

「取り組みが進んでもなかなか結果に繋がらないと聞くことも多いです。だから一つの会社だけが前に進めば良いということではありません。ランスタッドは特に人材サービスの会社として、あるいはオランダに本社がある会社として、社会に対して働きかけていくことができる。本当に効果的に実行できる形のプラクティスを共有していきたいです」

 

ダイバーシティの観点から、今の日本社会の閉塞感に大きな危機感を覚えている村松。女性の活躍にはほど遠く、それが少子化につながり労働力が減少していく。それは人材サービス会社として解決すべき課題であると考えているのです。

 

性別や年齢の制約など、現実にある課題をビジネスを通じて解決していきたい。ランスタッドが先進的な企業になることで日本社会に働きかけていけると思っています」

人材サービス業界トップを目指して

2022年のTokyo Rainbow Prideにランスタッドがブースを出したときの写真。

「例えば『育児は女性がするものだ、男性が育児休業を取るなんて』と抵抗を示す人がいるとして、その価値観自体は尊重されるべきだと思っています。ただ、会社のコアバリューやポリシーに反する行為や他の人の権利と帰属意識を阻害する行為は許されないと思います

 

あり方「being」自体は尊重されるべきであっても、それを受け入れるかは別の話。重要なのは違いを理解し、行動「doing」をコントロールすることだと村松は話します。

 

「社員一人ひとりが自分の声を発信したり経営陣に声を届けたり。あるいは横でつながって連携を深めていくことで、自分たちが自分たちで働きやすく、その可能性を発揮できるような会社にしていく。そんなカルチャーを醸成していきたいですね」

 

果てしなく先の長いED&Iの取り組み。ERGの活動もより強化していこうと、日本全国にメンバーを増やしています。

 

「一つの現象や経験でも、『どういうモノの見方ができるか』という、さまざまな視点を取り入れるのがダイバーシティ。色んな見方をその会社の中に取り入れて選択肢が増えれば、より良い選択肢を選ぶことができる。その選択肢を増やすのがED&Iだと思っています」

 

選択肢を広げていき、働く社員の可能性を実現していく。それは社員のエンゲージメント向上や「働きがいのある会社」としての認定など、目に見える形として成果につながりつつあります。

多様な人が働く企業としてまず思い浮かぶのがランスタッドだったらいいなと思います。ランスタッドと言えばED&I、それを社員だけではなくスタッフや候補者の方々、さらにはクライアントや社会一般の方々に思っていただける、それが私が目指しているところです」

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