【派遣社員レポートvol.69】タンザニア中小企業 インタビューから見えてきたこと

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2017/12/11

今回のレポートではこれまでに私がインタビューした中小企業とのやりとりをひとつ、ご紹介したいと思います。今回ご紹介する企業である「Temba furniture」の例は、タンザニアの中小企業の中でも典型的だと思います。タンザニア企業の現状や課題を分かり易くお伝えできるように、質疑応答形式でご紹介いたします。

「Temba furniture」は、1984年に設立された家具メーカーで、リンディから車で約10分ほどの場所にビジネスの本拠地を置いています。5名の従業員のうち全員が家具職人です。そこで、経営者であるアブダラ氏にインタビューをしました。

下記、インタビュー内容

私:はじめまして、アブダラ社長。まずは現在のビジネス状況について教えてください。

A: 私たちのビジネスは昔から変わらず横ばいだよ。売り上げを上げるのにどうしたらよいか分からなくて困っている。何か良いアイデアはないかな?

私:こちらは家具を製造・販売しているのですよね?御社の家具の特徴を教えてください。

A:家具の仕上がりが良いところかな?表面はスムースだし、他社よりデザインも良いはずだ。

私:家具はどこで販売しているのですか?拝見したところ、工場内に接客するところや完成品をサンプルとしてお見せするところが無いようですが。

A:家具はここで販売してるんだよ。うちのお客さんは、リンディの人だけだからね。

私:では、接客はどうされているのですか?

A:接客か...正直接客している時間は無いんだよ

 私:はい?

A:私たちは注文を受け、製造しなくてはならない。現在いる5人の従業員だけでは家具を製造するのに手一杯で接客に時間を取っている余裕は無いんだよ。

私:それでは新規のお客さんの獲得や、新たな注文を受けられないのではないですか?

A:そうだね...本当は人を増やして販売担当をつけたいんだよ、出来ればショールームも設けたいとも思っている。でも、会社を起こして30年ほど経つが一度も接客や販売に注力できたことは無い。昔からのお客さんや口コミ客だけだよ。

 私:販売やマーケティング担当者を採用していてはいかがでしょう?

A:採用する余裕がない、お金がないんだよ。

私:金融機関から融資を受けてはいかがでしょうか?

A:なんども試したよ、でも銀行からは門前払いでとても融資を受けられる状態ではない。

私:なぜですか?

A:私たちの会社はまだ適正な機関に登録されてない。それに売り上げやコストを帳簿で管理していないから、融資に対して返済可能な企業であるのか銀行側も判断出来ない。それに今から数年先のビジネスプランも求められるが、それもない。

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 上記のやり取りで、タンザニアの中小企業が抱える課題をご理解いただけましたでしょうか?

マーケティング界では、『AIDMA』と言われる鉄板の法則があります。『AIDMA(アイドマ)』とは、「Attention(注意)」→ 「Interest(関心)」→ 「Desire(欲求)」→ 「Memory(記憶)」→ 「Action(行動)」の頭文字を取ったもので、消費者があるモノを知り、購買に至るまでのプロセスを表しています。これまでのタンザニアの状況を見ていると、最初の「Attention(注意)」に課題がある印象です。マーケティングの基本であるお客様の「Attention(注意)」なしに、「Action(行動)=販売」は獲得できない。タンザニアの人々が、これを認識することこそが重要だと考え、次週以降に中小企業対象のトレーニングやセミナーを実施する予定です。

私のタンザニア滞在も残すところ数週間となりましたが、時間が許す限り一つでも多くの企業を訪問し、改善策を共に考えていきたいと思います。

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