【派遣社員レポートvol.51】VSOの大切な資源~募金の使い道について~

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2016/05/17


今回は、VSOのようなNGO団体の大切な活動資源である、寄付の使い道についてご紹介します。VSOが行う子どもたちの教育支援や環境保護などの活動は、お金として利益を生むわけではないので、外部から寄付を募る必要があります。VSOには運営資金を得るための専属部署があり、アプローチするのは、実際に私のように社員をボランティアとして派遣したり、社内で募った募金を提供しているランスタッドのような一般企業や、ネパール国内の団体、または個人(パートナー)です。ネパールには何千ものNGO団体が存在しているため、パートナーからの継続的な支援を受けるために関係構築をしたり、パートナーとなる団体の経営状況が安定しているかどうかを随時判断しなければなりません。また、私の所属するICSチームでは、年間約200人の若者ボランティアをイギリスから受け入れており、母国での準備期間中に1人約8万円の募金を集めることがプロジェクトの参加条件になっています。

では、パートナーから集められた活動資金はどのように使われているのでしょうか。

年間予算は振り分けられますが、「非常事態」のために資金をいくら確保しておけるかが重要になるそうです。去年起きた地震では、避難用テントや救急箱が大量に必要になりました。また、写真にあるように、地震後に潰れた学校が復旧されるまで、一時的な学校を竹などの資材で作り、授業を行っていたそうです。このように、緊急事態にすぐに動けるよう活動資金を安定的に確保することが最優先になりますが、各プロジェクトを遂行する上で、ボランティアから資金の援助を要請することも出来ます。例えば、今まで田舎の病院で傷病者を運ぶ際、食用の豚を運ぶ竹の棒に手足を縛って運んでいたことから、安全な体位で病院に運ぶには救命用具が必要だとボランティアから声が挙がり、今年初めてタンカの導入が始まりました。また、首都から離れた学校では教科書が人数分届かないことが多々あり、小さな教科書を数人で覗き込んで勉強していたことから、教科書を拡大した映し出せるスクリーンの導入もボランティアの一声で始まりました。使用用途は非常に多様で、その時のニーズによって柔軟に変化します。

このように、資金の使い道まで掘り下げていくと、発展途上国におけるNGOの存在意義がよく分かります。もし、権力闘争で不安定な政府を通して海外からの援助が送られるならば、その何パーセントが援助を必要としている人たちに届くのかわかりません。NGOが政府から独立しているというのは非常に重要な要素なのです。。その点、NGOではその援助がコミュニティーの自立支援の壁になっていないか、継続して必要とされているのか、を常に調査しながら、適正な援助先を決定することが出来ます。

日本でも募金の機会は沢山ありますが、対象となる被災地や発展途上国が困っていることが分かっていても、その使い道がわからなかったり、募金先のNGO団体への信憑性を考慮し、実際に募金を行うかどうか悩むこともあると思います。ただ、継続的に募金をすることで、実際に現地に行けなくても、どのように支援が行われているのかを知る権利が生まれ、他人ごとではなく「自分ごと」になります。自然と、ニュースや新聞で見るような世界で起こっている出来事についても、当事者として考える瞬間が増えるのではないでしょうか。勿論、募金というのは援助の形の1つでしかありませんが、NGO団体が活動するためには大切な要素であることは間違いありません。

もし、皆さんの周りで募金の機会があれば、その向こう側に何が見えるのか、一度立ち止まって調べたり、考えてみてください!


臨時に建てられた学校での授業の様子

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