the best workplaces
selected in Sendai 2019.
受賞企業インタビュー

今回、総合1位、3位、5位を受賞された企業へ、これからの日本において「より良く働く」とは?「より良く働ける環境」とは?をテーマに「いま最も働きたいと思われている企業」ならではの取り組み等を取材させていただきました。

総合3位

IHI

航空・宇宙・防衛事業領域 相馬事業所
総務部長

黒澤 一弘

航空・宇宙・防衛事業領域 相馬事業所
総務部(人事担当)

塚田 拓

多くの人に長く活躍して欲しいから
―IHIの“当たり前のこと”

思わず働きたくなる魅力ある企業の要素として、今春から始動した働き方改革は重要な役割を担っている。そんな中、エンプロイヤーブランドを推進する取り組みとして、世界最大級の総合人材サービス「ランスタッド」が主催するアワードが、「the best workplaces selected in Sendai 2019. ~地元で輝く、いま最も働きたい企業 2019 みなみ東北版 ~」だ。

今回は、その受賞企業のひとつで、株式会社IHIの相馬事業所を取材させていただいた。
37万平米の敷地を誇るこの広大な事業所で、従業員たちがどのように働いているのか、その取組みや施策について総務部長の黒澤一弘氏と総務部人事担当の塚田拓氏に話を伺った。

取材・文:ランスタッド株式会社

多くの人に長く働いて欲しいという姿勢は事業所創設時からのコンセプト

IHIと言えば、1853年創設の日本初の近代的造船所「石川島造船所」が起源。現在では、陸上機械、橋梁、プラント、航空エンジンなどにおけるリーディングカンパニーである。ここ、相馬事業所でも「技術をもって社会の発展に貢献する」「人材こそが最大かつ唯一の財産である」という経営理念のもと多くの従業員が働いている。

――大変広くてきれいな事業所ですね。ここではどのようなものを作っているのでしょうか。

黒澤:航空エンジンやロケットエンジンの部品を作っています。大きく分けて、航空エンジンのブレードなどを大量生産する工場と、そのブレードをはめるリング状の部品やギアなど、もう少し大きい部品を作っている工場とがあります。大量生産できる方の工場では、作業をライン化して多くのパートの方に活躍してもらっています。もう一方の工場では、旋盤を使うなど比較的技能が必要とされるため、そういったスキルや経験のある派遣の方を多く雇っていますが、最近は採用が難しくなってきているので、何らかの似たような経験のある方を採用して経験を積んでいってもらうことが多いですね。事業所全体では、パート、派遣社員、正社員含めて約1400名が働いています。

――随分と多くの方が活躍されていますが、何か採用や定着で工夫されていることはありますか。

黒澤・塚田:他社と違うところと言えば、企業内保育所があります。定員が30名で現在ほぼ満員です。当初は20名だったのですが、すぐにいっぱいになり拡大しました。パート募集で広告を出したところ、かなり問合せもありました。

塚田:みんなが使える食堂もあります。食券を買って好きなメニューを食べることも出来ますし、仕出し弁当を頼んだり、持参したお弁当を食べたりしていますね。シフト交代の仕事のため、夜勤のときでもお弁当の配達を頼むことができるんですよ。特に夜勤だと、契約社員の若い男性がガンガン働いてくれています。夜勤の分時給も高いですし、ゆくゆくは正社員転換を目指している方もいます。

あとは、実際に採用して働いてくれた方に聞くと、「工場がきれい」という声があがりますね。ヘルメットも基本不要ですし、作業着も清潔感がありますし、しかも空調が整っているので、かなり快適に作業ができます。結果的にそこを働きやすいと感じてくれている方もいるようです。この工場は、一番古いところで20年前、最新のところで3年前に作られたのですが、同じIHIの中でも就業環境の快適さを特に意識して作られています。さきほど言ったような、ヘルメットや帽子を着けずに作業できるような工場にしようという思想が建設当初からあったようです。

――職場環境の快適さは重要ですよね。ところで、いま正社員転換についての話が出ましたが、どのような制度なのでしょうか。

黒澤:ある一定の期間在籍して条件を満たせば、正社員への転換試験を受けられます。面接と筆記試験を実施して採用するのですが、倍率は高いですね。それだけチャレンジしてくれる方がいるということですし、こちらとしても人材を育てていきたいという思いはあります。

黒澤・塚田:多くの方にできるだけ長く働いて欲しいという思いもあるので、勤務時間も柔軟に対応するようにしています。もともと正社員の離職率は低いのですが、派遣社員やパートの方だと介護やご家庭の事情で止むを得ず・・・ということもあります。そういう状況になった場合でも、なるべく続けられるように短時間勤務にも対応出来るようにしています。弊社は8時間勤務が基本ですが、5時間や6時間の勤務にも対応しています。朝は早く来られないけれども夜は働けるのであれば、その人にあった働き方をしてもらいましょう、と。もちろん限度はありますが、個人単位でその人にあった働き方を決めて受け入れるようにしています。上長も現場を俯瞰的に見て業務を割り振りしてくれていますし、上長だけでなく周りの他の従業員の理解もあってこそだと思います。この工場の当初のコンセプトの一つに“パートの活用”があげられていたので、かなり前から、管理部門は適用できる制度は適用する、現場も仕事の割り当てを的確に柔軟に対応する、ということが出来ているのだと思います。

地域に根ざした取組みと『相馬から世界へ』のスローガン

――相馬市の近辺ではこれだけの規模の工場はここだけとのことですが、地元との交流は何かありますか。

黒澤:毎年夏にお祭りをやっていますね。その日だけは敷地を解放して、従業員の家族だけでなく近隣の方にもたくさんいらして頂いています。飲食はもちろん、花火も上げます。地域の方にも「IHIのお祭りは花火もあるよ!」と結構知られていますね。

黒澤・塚田:私ども従業員の大半が地元の出身なので、地域に貢献したい、協力したいという思いがあります。その取り組みの一つにインターンシップという位置づけで、中高生の実習を受け入れています。この工場は危険を伴う作業が他の事業所と比べて少ないということもあり、大型工場ではあまりない取組みだと思いますし、IHIを知ってもらうきっかけになっていますね。外から見ていると何をしている会社なのか全然分からなかったけれど、実習にきて「こういうことをやっているんだ」と知って、IHIに入りたいな、と思ってくれる子もいるようです。実際に新入社員の研修を担当していると、我々も「見たことがある」という社員がいたりして、一定の成果はあるのかなと思いますし嬉しいですね。

――お話を伺った限り、働きたいと思われるポイントがたくさんありますが、実際にthe best workplaces selected in Sendai 2019.~地元で輝く、いま最も働きたい企業 2019 みなみ東北版 ~を受賞されたときはどう思われましたか。

黒澤:BtoBの会社であるIHIをどうやって知ったのかな、と驚きましたね。働きたいと思ってもらったことに関して嬉しいな、と思う反面「なんで?」とは思いました(笑)。このエリアでの知名度はそれなりにあると思うのですが、実感がなかったので。

塚田:いくつか採用や人事に関する取り組みの話をしましたが、一方で航空エンジンに関われる仕事をするというインパクトの強さも、働きたいと思われる一因なのかと思います。我々が作っているのは、航空エンジンだったり、宇宙関連の仕事だったりするので、周りから見た時に、すごくロマンのある格好いい仕事をしている、という思いを抱かれているのではないかと。実際に、世界でこの事業所でしか作っていない部品がたくさんあって、その部品で作られたエンジンを載せた飛行機が地球上をバンバン飛んでいるというのを思い描くと、我々もやりがいを感じますね。
『相馬から世界へ』というスローガンも掲げているので、外からIHIを見た時に、シンプルに格好いい仕事をしている、という印象があるかも知れません。

――最後に、現在課題に感じていることや取り組んでいきたいことを教えてください。

黒澤:今よりさらに働きやすい環境を築くことでしょうか。残業時間の削減や年次休暇一斉使用日を増やすなどの各種取組み取り組みはしていますが,より効果がでるものを考えていきたいです。
一方で、企業内保育所やパートの方の時短勤務などは特に特徴的なことはやっていると思っていませんでした。言われて初めて珍しいことなのだと気付かされましたが、我々はずっと普通にやってきたことなので、引き続き “当たり前のこと”として続けていき、そんな“当たり前”をさらに増やしていきたいと思います。

IHI HP