ファイナルレポート: VSOの活動を通して得たこと

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2016/02/10

早いもので、日本に帰国してから既に1ヶ月が経ってしまいました。1ヶ月前までネパールにいたのが不思議に感じられるくらい、あっという間に過ぎていきました。今回は、帰国から約1ヶ月経ち、3ヶ月間のネパールでの活動で学んだ事や感じた事、また日本に帰ってきて改めて感じた事などをファイナルレポートとして振り返りたいと思います。

ネパールの活動を通して学んだことは、新しい環境の中に飛び込んだ際に、「何をやるのか、だけではなく、なぜやるのかを考えること」、「全体像を理解すること」、そして「自身の立ち位置をつくりあげること」の大切さと難しさです。

まず、何かを計画して実行する際、「何をやるのか」を考える以前に「なぜそれを行うのか」を考える重要性を学びました。ネパール現地でICSボランティア参加者に向けたセッションを一人で行う事が決まった時、私は常にセッションで何を行うか、ばかりを考えていました。アイデアを探すためにインターネットで情報を探したりしても、納得のいく回答が見つかることもなく、1日が過ぎていくばかりでした。

この時、私に欠けていたのは「なぜそれをやるのか」という発想でした。何かやらなくては、何か結果を出さなければ、とばかり考えていて、セッションを受ける側の視点が抜けていました。「何をやるのか」を考える事はもちろん大切ですが、「なぜやるのか」という問いを持つ事で、本質を捉える大切な問いがどんどん出てきました。そもそもこのセッションが行われる目的は?研修全体の目的は?参加者はなぜICSに参加しているの?このセッションを通じて、参加者にどうなってもらいたい?これらの問いに対して自分の中で答えを用意する事でようやく「何をやるのか」に取り組み始めることができました。

また、新しい環境に適応する為には、全体像(枠組みや背景)と細かい点を理解し、つなげることが大切だということを学びました。新しい環境にはいったとき、以前いた環境とは違う点が必ずあります。そのとき、細かい点だけに集中したり、教えられたりしても、全体像を理解しないと本当の意味で腑に落ちることはありません。日々の業務を進めていくなかでも、その業務を行う理由や背景、組織全体への理解がなければ、その業務を行う意味を理解することは困難です。ICSのスタッフはすでに自分たちの仕事があるので、なかなか1つ1つの業務の背景まで細かく説明をしてくれることはなかったので、自ら彼らにプログラムの流れやプロジェクトの流れを説明してもらったりしてこれからの流れを理解し、またICSの資料をもらってプログラムの概要を理解するなどして、なんとかICSスタッフたちと同じ目線で取り組めるようにできることをしてきました。両側面で理解しようとすると、ようやく彼らがどういう仕事をしていて、その先になにがあるのかなどが腑に落ちるようになりました。

そして、新しい環境の中で自分の立ち位置をつくりあげる事の難しさと重要性を現地の活動を通じて学びました。現地では、ICSのスタッフとして、ICSに参加する学生ボランティアメンバーのサポートをしていました。つまり、地域の人々のために活動をするのは私ではなく、プログラムに参加している学生ボランティアメンバーです。自身がどこまで主体的に行動を行えばいいのかの判断や、自分の立ち位置の確立、そしてCS内で居場所をつくりあげるのは思った以上に苦労しました。特に前半は、プログラムが始まっていなかったのでICSスタッフに対して、後半はICSに参加する学生ボランティアメンバーに対して自分は何者でどうしてここにいるのかという役割を明確にすることを意識していました。自分でつくりあげていかないといけない。という事はアタマで理解はしていたものの、目の前でそうなったときに、思い通りにいかず一歩引いてしまうこともありました。後半にセッションを行なうことができ、彼らにも自分の役割を伝えることができたのですが、今でもこの点に関しては、もっと何かアクションがとれたのではないかと思っています。

また、日本に帰国したことで、改めて感じていることがあります。

まず、気づかないうちに私たちは、様々な情報を獲得していくなかで、先入観や固定観念を持ち、フィルターを通して物事を理解しようとすることがあります。そういった他者からの情報のみにとらわれず、、自分の目で経験し、感じる事がどれだけ大切かということに改めて感じました。正直、ネパールに行く前は、自分が気づかない内にネパールに対してネガティブ且つ悲観的な目をもち、そのフィルターを通して「ネパールは大変な国だろうから、少しでも良い生活、暮らしができるような人々を増やせるように、なにか良い事をしてこよう。」というような思いがどこかにありました。しかし、ネパールで実際に暮らし、仕事をし、ネパール人と関わっていくなかで、ネパールに対する思いが180度変わり、自分はなぜネパールに対して(もしくはネパールのような発展途上国)ネガティブな、悲観的なイメージを持っていたのだろうかと思いました。自分が見たネパールという国は、そんなイメージを感じさせないくらい人々のエネルギーがあふれていて、出会う人達はみんな笑顔で、とても幸せそうでした。むしろ、日本の方が...なんて思う事もありました。

また、私のネパールに対するイメージを、良い意味で「裏切って」くれたのは、ネパールの若者たちとの出会いです。彼らとの出会いに、ネパールの未来を変えていくであろう可能性を感じました。私が3ヶ月の間に出会った若者の中には、ネパールに行く前から耳にしていた社会問題を抱え、たしかに教育を満足に受けれていない若者や、大学まで通ったものの卒業後は結婚という選択肢しか与えられない方もいました。しかし同時に、イギリス人たちと言語の壁を感じさせないくらい流暢に英語をしゃべっているICSのボランティア参加者や、大学院に通いながらVSOに勤務している人達や、若くして自分の店を持ち、観光客向けに複数の言語を駆使している人、欧米の大学院を目指して勉強している大学生など、ほんとにいろんなひとたちに出会いました。カースト制度がまだまだ根付いているこの国が、トップダウンで変わるにはまだまだ時間がかかるだろうと思います。それを変えるのがネパールにいるたくさんの若者たちなのでしょう。ネパールがより良い方向に進んで行くには、ボトムアップで変わっていくことが必要であり、そしてその役割を担う若者は想像以上にたくさんいました。

日本にいると当たり前の事も、日本をでればそれは当たり前ではなくなります。日本人じゃやらないこと、できないことも、日本を出れば普通にやる人達がいます。それは逆もしかりです。つまり、日本にもネパール(他国)にもそれぞれいい点があり、悪い点があります。

だから、自分が正しいと決めつけるのではなく、まずは知ろうとする姿勢を持つ。そして相手に知ってもらうためには伝えなくてはいけない。伝えるためには、自分たちの事を理解しなくてはいけない、当たり前にある目の前の事を知ろうとする姿勢をもたないといけないと、改めて帰国した今感じています。

今回の活動を通して、仕事も含めた目の前の事に対する自分の姿勢を改め直す、すばらしい機会になりました。そしてVSOスタッフ、ボランティアメンバーを含めて多くの人たちと出会うことができ、彼らのおかげで充実した活動期間を過ごすことができました。この活動で得た事、培った事は、新しく着任した秋葉原オフィスのなかだけでなく、会社全体、そして社会全体に貢献できるような活動へとつなげていきたいと思います。

VSOボランティアメンバーと年越し

最終日のannual conferenceでの1枚

最初の期間に一番サポートしてくれたボランティアメンバー

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