interview病気と向き合い、他者を理解する力に。研究者・障がい者・人事担当者として、誰もが働ける職場を目指す

竹川 章博人事本部 タレントアトラクションチーム TAスペシャリスト
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- 栃木県出身。中央大学大学院博士後期課程在籍中に統合失調症を発症。それ以来障がい者と健常者がともに働くことのできる条件を考えるようになる。障がい者雇用支援に従事する会社を経てランスタッドに障がい者雇用枠で入社。研究は継続しており「障害者雇用の現場で<異質なる身体>に“出会う”―雇用の場で「社会的関係」が拓かれるとき―」(新原道信編『惑星社会のフィールドワーク―内なる惑星とコミュニティに“出会う”―』所収)を上梓。現在に至る。
「障がいとどう働くか」。自身の課題を研究テーマに変え、辿り着いたランスタッドという選択

研究に打ち込む日々のなかで、突然発症した病。その経験が「障がい者と健常者が共に働くことのできる条件」という新たな研究テーマへと変える決め手となりました。研究者、障がい者、そしてランスタッドの人事担当者。3つの視点を持つからこそ語れる「本当に働きやすい会社」の姿とは。自身の経験を強みに変えて、挑戦を続ける想いを伺いました。
大学院では、地域研究に没頭する日々でした。月に一度は飛行機で北海道へ渡り、調査に打ち込むなど、現場を駆け回るような生活を送っていた竹川に突然転機が訪れます。
(竹川)「大学院在籍中に統合失調症を発症ししました。体力的に以前のような研究活動は難しくなり、さらに家庭の事情から就職を考えなければならない状況だったのです。このとき『障がいとどう向き合って働くか』という課題が頭に浮かびました。
それは個人的な悩みと同時に、研究者として社会的に大切な問題だと考えたのです。こうして、自身の病気発症から新たな研究テーマが『障がい者と健常者が共に働くことのできる条件』になりました」
大学院での研究を続けながら、障がい者雇用を支援する会社に就職。顧客の候補者を集めるマーケティングの仕事で、数字をベースに考える思考法を身につけます。採用が決まって顧客の窓口の同僚から感謝されるやりがいと、採用に至らない時の申し訳なさ。その両方を痛感する日々でした。
それから「採用する側の視点」をより深く考えるようになった竹川。博士論文への情熱も持ち続けるなか、共著の出版がキャリアを見つめ直すきっかけとなります。
(竹川)「このまま研究の道に戻るか、それとも採用のプロフェッショナルを目指すか。2つの道に迷いがありました。顧客の候補者を集める採用支援の仕事を通して、『自分は採用する側の視点を理解できているのだろうか』という疑問が湧いてきたんです。そこで、大学院に戻る準備を進めながら、企業の中で採用を担う人事職への転職を考え始めました」
竹川がランスタッドに入社する決め手になったのは、「ジョブ型雇用」でした。
(竹川)「ランスタッドの公平性には、正直驚きましたね。障がいの有無に関係なく、同じ仕事内容であれば待遇も同じという考えが徹底されていました。それに加えてランスタッドは、障がいのある社員がどうキャリアを築いていくかを、当事者として見ることができます。
これこそが、研究テーマである『障がい者と健常者が共に働くことのできる条件』を考えるうえで、何より貴重な経験になると思いました。自分のキャリアと研究、その両方をここでなら深めていけると確信し、入社を決めました」
人柄の良さを支える仕組みと、柔軟な働き方が生んだ質の高いコミュニケーション

ランスタッドに入社して、竹川が今、最も魅力に感じているのは、社員たちの人柄の良さです。その言葉からは、仲間への想いが伝わってきます。
(竹川)「ランスタッドで働く仲間たちが、本当に大好きなんです。人手が足りない現場をただ補うのではなく、チームやビジネスを前に進められる“良い人”を採用したい。その想いが、私が採用活動に取り組む理由です。また働きづらさを感じている人が集える場所として、社員同士で支え合う活動(ERG)にも力を入れています。僕が仕事をするうえで一番大切にしているのは、この仲間を想う気持ちですね」
こうした温かい社風が、なぜ生まれるのか。竹川は会社としての仕組みにあると語ります。
(竹川)「例えば週に1回、上司と1on1の時間があって、仕事のことからキャリアや体調のことまで、何でも気軽に話せるんです。また月に1回、全国の人事メンバーとランダムに話す『ティータイムセッション』というオンラインのお茶会があります。こうした会社としての仕組みがあるから、離れていてもお互いのことが分かり、良い関係が築きやすいんだと感じています」
また、テレワークとフルフレックスという働き方もランスタッドの大きな魅力です。
(竹川)「通勤ストレスがないだけで、こんなにも快適なのかと驚きました。自分のペースで仕事ができるため体調管理もしやすく、朝の時間を研究に充てられます。それに、オンラインが中心になったことで、コミュニケーションの質も上がったと感じています。限られた時間で話す必要はありますが、自然と要点をまとめて話すようになり、一つひとつの対話の密度が濃くなりました。これは、自分自身の成長にもつながっていると思います」
データと対話で築くWin-Winの関係。ERG活動で社内の多様性をドライブする

現在、竹川さんはTAスペシャリストとして、候補者面談もしつつ、主に採用メディアを通じた候補者の集客活動全般を担っています。
(竹川)「仕事の効率をとても大事にしています。時間の区切りなしに際限なく頑張ると、身体に無理がくることはずいぶん痛い目にあって学びました。限られた時間で成果を出すには、どこに力を入れるべきかを見極めることが大切です。そのためにやっているのは、徹底的にデータを活用することです。
例えば、どの求人広告にどれだけの費用と手間をかけたか、全部数字にして『見える化』することで、どこに集中すればいいか客観的に分かります。さらに、感覚ではなく数字で話すことで、まわりの人とも納得のある話し合いもできます」
この姿勢は、取引先であるベンダーとの関係構築にも活かされています。
(竹川)「ベンダーの方々を単なる取引先ではなく、同じ目標に向かうパートナーだと考えています。お互いの状況をデータで見える化し、『採用成功』という共通のゴールのために何ができるかを一緒に考えます。時には難しいお願いをすることもありますが、それも普段から築いている信頼関係があってこそですね」
通常業務に加え、竹川は社内の自主的な活動にも参加しています。竹川が中心メンバーを務めるのは、障がいのある社員の活躍を考える「ニューロダイバーシティERG」です。
(竹川)「僕が参加してから、活動の方向性を知ってもらうだけではなく、お互いに歩み寄る対話の場に変えていきました。『雰囲気が変わったね』と仲間に言ってもらえたのは、本当に嬉しかったですね。
最近、この活動についてのグローバル主催のイベントでのプレゼンテーションがきっかけで、オーストラリアの社員から『ぜひ情報交換したい』と連絡が来ました。海外の仲間とつながれるのも、グローバルなランスタッドならではの魅力だと思います」
後に続く人のロールモデルへ。ランスタッドにあるキャリアの可能性

仕事と研究、2つの軸を両立させながら、竹川は自身の展望を語ってくれました。
(竹川)「TAスペシャリストとしての目標は、後に続く障がいのある社員にとっての良いロールモデルになることです。障がい者雇用の社員がTAのような専門職として活躍する例は、まだ多くないかもしれません。だからこそ、このポジションでしっかり成果を出すことで、『自分にもできるかもしれない』と一歩踏み出すきっかけになれたら、それが一番のやりがいです。
そしてERGの活動では、海外の仲間とのつながりをもっと活かしていきたいですね。ほかの国ではどんな取り組みをしているのかを学び、それをランスタッドにも取り入れて、会社をさらに良くしていきたいと思っています」
竹川は、現状に満足することはありません。
(竹川)「今のジョブ型雇用は公平で、素晴らしいと思っています。ただ、さらに良くしていくために、もっと柔軟な働き方があってもいいと感じています。それは、障がいのある方は何か一つ苦手なことがあるだけで、力を発揮しきれない場合もあるからです。
障がいのある方は、個々に尖った才能を持っている傾向にあります。その才能を仕事に活かす働き方であれば、より活躍できると考えています。このように、その人らしいキャリアを歩んでいけるようになると嬉しいですね」
最後に、ランスタッドへの転職を考えている方へメッセージをいただきました。
(竹川)「ランスタッドは、『あなたはどうしたいのか』が問われる会社です。自分のキャリアは自分で決める、という意志のある方には最高の環境だと思います。もちろん、まわりにはサポートしてくれる上司や同僚がたくさんいるため、安心して挑戦できる環境が整っています。
特に可能性があることも知ってほしいですね。社内公募で新しい仕事に挑戦する自由もあれば、体調を考えて『今は動かない』という選択もできます。挑戦することも、立ち止まることも尊重してくれるこの会社で、ぜひ一緒に働けたら嬉しいです」
自身の病から、研究テーマを「障がい者と健常者が共に働くことのできる条件」に変えた竹川。ランスタッドの公平な環境は、その研究も続けられる場所となりました。社内でリードするERG活動は、今や海外の仲間へとつながり、その想いを広げています。
「個人の経験が、組織を動かす力になる」ランスタッドは、そういった働き方ができる場所なのかもしれません。

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