「同一労働同一賃金」導入に向けた検討開始、一億総活躍国民会議で首相表明  政府、ガイドライン策定の議論へ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
閉じる
2016/02/24

 一億総活躍国民会議(議長・安倍晋三首相)は23日、首相官邸で第5回会議を開き、雇用形態にかかわらず同じ仕事に同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」の導入に向け議論を始めた。1月29日の同会議で安倍首相が「働き方改革」の一環として明言していたもので、5月に公表する中長期の工程表「ニッポン一億総活躍プラン」に方向性を盛り込む方針。「例外のない一律導入と関係法令の即時改正」といった受け止めも方も広がっているが、政府は実現の下地づくりとなるガイドライン(指針)策定の議論を先行する。

 正当でない賃金格差の事例となるガイドライン策定については、2月19日の衆院予算委員会で安倍首相が言及。この日の会議でも「早期の指針づくり」を表明し、専門家による検討会の立ち上げを閣僚に指示した。労働契約法やパートタイム労働法、労働者派遣法など、いずれかの改正の可能性もあり得る。

 この日は、労働法が専門の東大社会科学研究所の水町勇一郎教授が参考人として招かれ、同会議員とともに同一労働同一賃金の推進について、それぞれの見解や提言を行った。このうち、水町氏の資料によると、欧州(EU、フランス、ドイツ)の関係法令などを紹介したうえで、「基本的には客観的な理由がない限り、非正規労働者に対し不利益な取り扱いをしてはならない。客観的な理由があれば、賃金に差を設けるなどの取り扱いも認められる」と整理。加えて、「フランスでは提供された労働の質の違い、在職期間(勤続年数)の違い、キャリアコースの違い、企業内での法的状況の違い、職業格付けの違いなどが、賃金の違いを正当化する客観的な理由と認められると解釈されている」と指摘している。

 日本での導入と実現可能性では、「欧州は職務給、日本は職能給(職務+キャリア展開)なので、日本での導入は難しいという議論がある。しかし、欧州でも多様な事情が考慮に入れられており、日本でも導入は可能と考えられる」との見解を示している。

 会議後に安倍首相は、「誰もが活躍できる環境づくりを進めるためには、働き方改革の実行が不可欠。第一に同一労働同一賃金の実現だ。わが国の雇用慣行には十分に留意しつつ、同時に躊躇(ちゅうちょ)なく法改正の準備を進める。あわせて、早期にガイドラインを制定して事例を示していく」と強調。「法律家などからなる専門的検討の場を立ち上げ、厚生労働省と内閣官房で協力して欧州での法律の運用実態の把握などを進めたい。できない理由はいくらでも挙げることはできるが、大切なことはどうやったら実現できるかであり、ここに、意識を集中する」と述べた。

 会議では、非正規労働者の待遇改善の議論のほか、高齢者や若者、障害・難病のある人の就業促進についても議論が行われた。

 同会議は、安倍議長と加藤勝信・一億総活躍担当相(議長代理)を先頭に、関係11大臣と有識者15人で構成。政府が掲げる「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」のいわゆる「新・三本の矢」を実現するためのプランの策定などが狙い。昨年10月29日に初会合を開き、その都度テーマを決めて会議や意見交換会、懇談会などを開催している。

配信元:アドバンスニュース

ログアウト