【ランスタッド・ワークモニター】いつでもどこでも勤務、グローバル平均並みの4割の職場で可能

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
閉じる
2018/06/21

しかし、実態は8割以上が営業時間にオフィスで勤務
勤務先からのテクノロジー支援面や、成果を出す働き方に対する労働者の意識面の双方が低い傾向

特筆事項

■「勤務先ではいつでもどこからでも働くことができる」と回答した日本の労働者はグローバル平均並みの40.2%。しかし、実際は81.2%が営業時間にオフィスで勤務している状況

■ 勤務先からのテクノロジーサポートはグローバル最下位。また、日本では女性がオフィス以外での勤務に職務上の制約を感じる傾向

■ 「生産性、創造性、仕事の満足度向上のための柔軟な勤務形態」への同意は66.7%で、グローバル平均の81.0%から大きく乖離。「柔軟な勤務=無理なく持続的に働くため」というという考えか




調査結果 概要

「勤務先ではいつでもどこからでも働くことができる」と回答した日本の労働者はグローバル平均並みの40.2%。しかし、実際は81.2%が営業時間にオフィスで勤務している状況

近年進む働き方改革を背景に、時間や場所にとらわれない働き方が日本でも広がりを見せています。今回の調査では、日本の労働者の40.2%が「勤務先ではいつでもどこでも働ける」と回答しました。グローバル平均は41.3%、最高値はインドの64.4%、最低値はチェコの25.9%でした。一般的に、世界から遅れをとっているイメージの日本ですが、実際にはグローバル並みにフレキシブルな働き方の制度が整いつつあることが分かります。



しかし、実際の勤務についての設問では、日本人の81.2%が「全員が営業時間にオフィスで働いている」と回答。グローバル平均67.7%から13.5ポイントの開き、インド、香港、トルコに次いで4番目に高い結果でした。




勤務先からのテクノロジーサポートはグローバル最下位。日本は女性がオフィス以外での勤務に職務上の制約を感じる傾向

では、なぜ日本ではオフィス以外での勤務に消極的な意見が多いのでしょうか。
一つにはテクノロジー面でのサポート不足が推測できます。リモート勤務用の機器に関する設問では、グローバルの労働者の55.6%が「勤務先から提供されている」と回答したのに対し、日本ではわずか33.6%で、調査国の中で最下位という結果でした。



また、「オフィス以外で働きたいが、職務上できない」の設問では、グローバルと比較して国としての数値に目立つものではありませんでしたが、日本では性別による差が9ポイントと大きく、「強く同意する」と回答した女性の割合が高い結果でした。日本ではオフィス以外での勤務が職務により限定されており、特に女性がその限定の対象となるケースが見受けられます。しかしテクノロジー面のサポートがグローバル並みに進んでいくことで、対象が広がる可能性も感じさせる結果でした。




生産性、創造性、仕事の満足度向上のための柔軟な勤務形態」への同意は66.7%で、グローバル平均の81.0%から大きく乖離。「柔軟な勤務=無理なく持続的に働くため」という考えか

では、意識面ではどうでしょうか。
今回の調査で「ワークライフバランスを目的とした柔軟な勤務形態」について、順位は低いものの日本の労働者の75.1%が好意的な意見でしたが、「生産性、創造性、仕事に対する満足度を高めるための柔軟な勤務形態」には66.7%の同意で、グローバル平均の81.0%から大きく乖離。33カ国の中で唯一の60%台という低い結果でした。「柔軟な働き方」は子育てや介護など、必要に応じて実施するもの、または長時間労働を抑制し、持続的に働くためのもの、という意識に留まることがうかがえます。






■ランスタッド・リサーチインスティテュート(RRI) 所長  中山悟朗


近年、グローバルでは「柔軟な働き方」の表現に「フレキシブル(flexible:柔軟性のある、順応性のある)」ではなく「アジャイル(agile:機敏な、機動的な)」を使う傾向が見られます。どちらも「場所や時間にとらわれない働き方」を意味する際に使われますが、「フレキシブル」が状況や環境への対応など受動的な要素も含むのに対し、「アジャイル」は生産性や成果などを目的に敢えてその働き方を選択するなど、能動的な意味合いが強いようです。先日、アマゾンジャパンは技術者の大幅増員とともに、業務内容に合わせて自由に働く場所を選択できるAgile-Based-Working(アジャイル・ベースド・ワーキング)を新オフィスに導入することを発表しました。ホワイトカラーの生産性向上は競争力アップに向けた喫緊の課題であり、アマゾンジャパンでは、社員がより高い創造性と生産性を発揮できるようにすることが目的、としています。
(2018年5月22日amazonプレスリリース「Amazon、東京のオフィスを拡張、コーポレート職および技術職で新たに1,000人を追加採用」)

今回のランスタッド調査では、労働者側が柔軟に働きたいと思っていても、テクノロジー面の不十分さや、意識面から、なかなか浸透に繋がらない日本の状況が明らかになりました。特に意識面は根強く、未だ「必要に応じた柔軟性=フレキシブル」のフェーズで、誰もがその恩恵を享受できる環境ではないことがうかがえます。従来の働き方は、上司も部下も「働いている」ことが目で見て分かりやすかったのに対し、場所や時間にとらわれない働き方は、何をしているか見えず、評価しづらい側面があります。だからこそ、労働者は自主的に成果をあげることを意識するようになります。柔軟な勤務を、必要とする人材に留まらせず、職務的に可能な人材まで広げることで、組織全体の生産性と満足度の向上に繋がることが期待できます。大切なことは、従業員が「就業時間にオフィスで働くこと」ではなく「成果をあげること」であるはずです。




ランスタッド・ワークモニターについて

ランスタッド・ワークモニターは、2003年ランスタッドの本社のあるオランダでスタートし、現在は欧州、アジアパシフィック、アメリカ大陸の世界33の国と地域で行われています。ワークモニターは年4回実施され、労働市場の動向に関するグローバルトレンドを調査しています。本調査はオンライン上で行われ、18-65歳の週24時間以上の勤務をする労働者を対象にしています(自営業を除く)。今回の調査期間は2018年1月10~21日でした。

調査実施国: アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、中国、チェコ、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、香港、ハンガリー、インド、イタリア、日本、ルクセンブルク、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、ポーランド、シンガポール、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、オランダ、英国、米国
以上33の国と地域
ログアウト