【派遣社員現地レポートvol.10】エコツーリズム実施検証、見えてきた課題

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2014/11/21

観光業は良い面だけではなく、観光客が増え、自然が破壊されたり、コミュニティの生活に悪影響を与えるというケースも少なからずあり、それを防ぐ、"エコツーリズム"をバクンデ村で導入が可能なのか、についても検証していく必要があります。その前に、"エコツーリズム"が何なのか、実際目で見てみようと思い、バクンデ村から徒歩で5時間の村まで下り、エコツアーを実践しているSWAN (Social Welfare Association of Nepal)の活動を見てきました。また、その後さらに"エコツーリズム"についてリサーチを進めるため、今度はネパールの第2の都市であるポカラから車で1時間弱のアスタム(Astam)村にある"Annapurna Eco-Village"に行ってみました。そこは素晴らしくエコビレッジとして確立されていて、水もJICAの力を借りて浄化システムを導入しており、併設している農場で育てた有機栽培の野菜を使用、牛も自ら飼育し生成したバイオガスで料理も作っています。コテージ前にある広場からはアンナプルナの山脈と、ポカラの町並みが見え、一種のリゾートとしての空間が完成されていました。利用客も、特に"エコ"に関心の強く、またリゾート感を楽しみたいというヨーロッパからの観光客が大半でした。
一方、オーナーの話を聞くと、必ずしもいい面ばかりではないようなのです。例えば、ここで導入している水の浄化システムを、近隣の公立小学校へ提供したところ、月に1回メンテナンスが必要なのでトレーニングを行ったにも関わらず、先生たちは自分たちで作業をやろうとしないため、維持ができていないようです。エコビレッジで収益をあげ、周辺コミュニティに提供をして、その時は良いのですが、与えられることに慣れてしまった周辺地域の人々は、さらにエコビレッジに期待するようになり、要望に応えきれないエコビレッジの人たちとの間で葛藤が今も続いているとのこと。エコビレッジ周辺を歩いてみて、近くにある公立小学校に行った時にたまたま会った先生に最初に言われたのは、「ここの学校の子たちは貧しい家庭で育っていて、いつでも寄付を歓迎しますよ」。学校の校庭の中には寄付箱が設置されていて、ガラス張りの箱の中には紙幣が入っていました。校庭で走り回る可愛い子どもたちの姿を見たら、通りすがりに寄付をしたくなるのは当然でしょうし、地元の人たちに比べたら、エコビレッジへの宿泊料を払える人たちはお金を持っているということは、学校の先生ももちろん知っているのでしょう。でも、先生が寄付を求めたり、目の前でお金を持っていそうな観光客が寄付するところを見て育つ子どもたちは、さらに人から与えられることに慣れて行ってしまうのではないかな、と私は不安な気持ちになりました。学校からエコビレッジへの帰り道、小さな男の子とすれ違い、とても可愛い笑顔で、「ナマステ」と手を合わせて挨拶をしてくれました。ですが通り過ぎた後、後ろから「ギブ スイーツ!」と男の子が私に向かって言ったのです。「何かお菓子ちょうだい!」ということですよね。無邪気な一言と思えばいいのでしょうが、外国人に英語で話しかければなにかくれるかも、と思っての一言に私は思えて仕方がありませんでした。

バクンデ村で会う子どもたちは、外国人である私に奇異の目を向けることはあっても、何かほしいと言ってくることは一度もありません。そもそも、英語で話しかけられるということはありません。この子どもたちが、観光客に群がって求めることだけを覚えないよう、願うばかりです。きっと、コミュニティの人たちに与え続けるのではなく、自発性を保ちながら、そのお手伝いをするという姿勢が必要なのだと感じますし、私は、バクンデの村のコミュニティの人たちが自分たちの意志でビジネスを立ち上げようとしていることに、可能性を感じ、その活動を手助けすることには少しでも意味があるのではないかなと思っています。
先日、バクンデ村でホームステイビジネスと観光業の立ち上げに取り組んでいる団体TPC(Tourism Promotion Committee)とHSC(Homestay Committee)のミーティングに参加し、歓迎セレモニーを開いて頂きました。私の6週間の滞在期間の間に、何か実現しようと、私の提案に耳を傾けてくれ、実行するためにはどうしたら良いか一緒に考えディスカッションしてくれるVSOやBYCやTPCの方々には本当に感謝しています。今回私の滞在が、少しでもコミュニティの方々への刺激になればいいなと思いつつ、私からの一方的な提案にならないよう、ヒアリングやディスカッションを大事にしながら、活動を続けていきたいと思います。

■エコビレッジで導入されている水浄化システム

■バグンデ村の子供たち

■TPC-HSCの方々と




(第2期派遣社員 内山)

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