改正労働契約法が成立

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2012/08/01

【労務・コンプライアンスノート】 第7回: 改正労働契約法が成立

8月3日、労働契約法の一部を改正する法律が成立しました。今回改正された主な内容は次のとおりです。

(1)無期雇用契約への転換
有期労働契約が通算5年に達した場合において、労働者から申出があった場合は、労働条件は従来と同一だが期間の定めのない労働契約を締結しなければならない。 ただし、契約と契約との間の空白期間が6か月以上ある場合(クーリング期間)、当該空白の前後の契約は通算しない。

(2)解雇原理の類推適用
労働者が契約更新を希望したにもかかわらず、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない雇止めが行われた場合、労働契約は従前と同一内容で使用者に承諾されたものとみなす。


この改正労働契約法は、公布の日から施行されることとなっています。ただし、無期雇用契約への転換については、公布から1年以内に政令で指定する日を施行日とすることとなっており、現在のところ2013年4月1日施行が見込まれています。

「5年間」の通算について、施行日前に締結された労働契約は算入せず、施行日以降に締結された労働契約に適用されることとなっています。

したがって、無期雇用契約への転換は実際には2018年から行われることとなります。

成立の直後から、この改正労働契約法の"効力"を疑問視する声がきこえます。

特に、当初から「労働契約は通算4年11か月まで」という労働契約書を締結し、長期に就労できる可能性を閉ざすかもしれないという懸念が呈されています。

厚生労働省は当法改正によって「恒常的な需要がある事業に有期労働契約を繰り返し更新することを廃し、無期労働契約として雇用の安定を図る」ことを目的としているようです。

しかしながら、「真に臨時の需要でなければ有期労働契約は締結できない」という条項を設ける案は、労働政策審議会で「雇用機会の減少の懸念を踏まえ、措置を講ずべき(有期労働契約の合理的理由を設定すべき)との結論に至らなかった」と断念を宣言し、今回は法案となりませんでした。

つまりは、労働政策審議会が匙を投げた「需要の見極め」を、5年間という時間の経過で機械的に整理することとなった恰好です。

"効果"のほどは2018年以降に答えが出ますが、「1つの職業に長期に雇用される」ための施策だけではなく、「離職後に円滑に職業移動でき、キャリアアップする環境の整備」も併せてすすめてもらいたいものです。

民間の事業は、"お役所"ほど採算度外視で長期に安定した需要があるわけではありませんから。

(2012年8月掲載)


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労務コンプライアンスノート本コラムでは、多様な人材を活用する企業人事部門の皆さまが、コンプライアンスに則った適正な形で人事・労務業務を遂行いただけるよう、ランスタッド顧問社労士がバラエティに富んだ労務トピックスを分かりやすく解説いたします。

特定社会保険労務士 田原 咲世 (たはら・さくよ)

1968年大阪生まれ。立命館大学修士課程修了後、旧労働省に入省し、労働基準法・男女雇用機会均等法・派遣法改正などを担当。2008年3月まで北海道労働局の需給調整指導官として活躍。2008年4月から札幌で北桜労働法務事務所を経営。特定社会保険労務士として、労働関係法を中心とした指導を行う。現ランスタッド、顧問社労士。

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