「特定労働者派遣事業」と「一般労働者派遣事業」

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2012/08/01

【労務・コンプライアンスノート】第4回: 「特定労働者派遣事業」と「一般労働者派遣事業」 

改正派遣法案が国会に上程されてから、派遣事業には『特定労働者派遣事業(以下「特定派遣」と略)』と『一般労働者派遣事業(「一般派遣」と略)』の2種類があるということが多くの人に知られるようになりました。

特定派遣は、派遣元に常時雇用されている労働者を派遣の対象にしていることから「景気変動があってもすぐに雇止めにならず失業の可能性が低い」と注目され、登録型派遣を行う一般派遣は逆に不安定な働き方のようにとらえられました。

しかし、特定派遣にも以下のような盲点があるのです。

まず、派遣元責任者が法に関する知識を身につける「派遣元責任者講習」の受講について、一般派遣の場合は義務ですが、特定派遣の場合は義務ではありません。このため、この講習を受講していない特定派遣の派遣元責任者もおります。受講していないことから法違反の派遣事業を行い、派遣先も巻き込んでトラブルになるケースが見受けられます。

また、一般派遣は、厚生労働大臣に決算報告書を提出し健全な財務事情である旨を証明しなければ許可が得られません。これは、派遣労働者にいざという時も休業手当など法に基づく金銭を支払うために課せられた許可の要件なのです。

しかし、特定派遣の場合は、財務事情は不問であり届出を行えば事業を開始できます。

このため、「本当は一般派遣を希望だが、財産がないため特定派遣の届出を行った」という厳しい財務事情の特定派遣事業所もあります。このため、いざという時に休業手当などを派遣労働者に支払えないまま倒産してしまうケースもあります。

労働者派遣事業は、労働者派遣法をはじめ様々な法律を遵守しなければ成り立たない事業です。

派遣先も派遣労働者も、「一般か特定か」だけではなく、派遣元が「法律に精通しているか」「賃金その他の金銭を支払うことができる財政事情か」ということを確認してからおつきあいしたいものです。

(2012年8月掲載)


このコラムに関するお問い合わせ:
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労務コンプライアンスノート本コラムでは、多様な人材を活用する企業人事部門の皆さまが、コンプライアンスに則った適正な形で人事・労務業務を遂行いただけるよう、ランスタッド顧問社労士がバラエティに富んだ労務トピックスを分かりやすく解説いたします。

特定社会保険労務士 田原 咲世 (たはら・さくよ)

1968年大阪生まれ。立命館大学修士課程修了後、旧労働省に入省し、労働基準法・男女雇用機会均等法・派遣法改正などを担当。2008年3月まで北海道労働局の需給調整指導官として活躍。2008年4月から札幌で北桜労働法務事務所を経営。特定社会保険労務士として、労働関係法を中心とした指導を行う。現ランスタッド、顧問社労士。

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