「専ら」派遣が規制される理由

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2012/08/01

【労務・コンプライアンスノート】第3回: 「専ら」派遣が規制される理由 

ランスタッドでは、改正派遣法の内容をお客さまにご案内するセミナーを全国8都市で順次開催しています。既に開催された会場から、多くの質問や感想が寄せられています。今回は、その中からいわゆる「専ら派遣」に関する質問や感想にお答えしたいと思います。

まず、資本関係があるグループ内でのみ派遣事業を行う「専ら派遣」がなぜ規制されるのかという理由です。

派遣法制定時、当時の労働省は次のような趣旨の説明をしています。「労働者派遣は、労働力需給調整事業(求人と求職のマッチング)の一部である。したがって、一部の企業にのみ派遣を行うことは広く需給調整を行っているとはいえない。また、労働力需給調整は公共職業安定所等の国の機関が行う事業であるが、その一翼を民間でも担っていただくのであるから特定の資本にのみ資する事業であってはならない」

次に、現行の制度と改正後との違いです。現行の法制度では、「専ら派遣を目的として事業を行ってはならい」のであって、事業の結果については問うていません。しかし、法改正後は、結果としてグループ内企業への派遣事業は全体の80%以下としなければならないと定められています。

また、派遣先を離職した労働者が派遣会社に在籍し、離職から1年以内に派遣労働者として元職場に派遣就労することも併せて禁止されることになりました。この制度は、改正法で新しく創設されたものです。

この離職労働者の派遣受入規制は、「労働力の需要があるのに離職させて、派遣労働者として労働条件を低く設定して元の職場で就労させるのは問題だから」という理由からです。ただし、60歳以上の定年退職後の高年齢者については適用除外となり、65歳までの継続雇用のひとつの在り方として従来通りの派遣受入ができる見込みです。

会場では、育児や介護などで離職した労働者も1年以内は派遣で受け入れられないのか、という質問がありました。 残念ながら、現在は育児・介護による離職者は適用除外として指定される議論はされていません。

国の施策の方向としては、同じ厚生労働省の雇用均等行政が「仕事と育児・介護との両立」を推進しており、家族的責任を理由に離職した後に派遣会社にて雇用管理いただき元の業務に従事するというのは方向としては正反対になってしまうからです。

ただ、個人的な思いとしては、昨今増加しているメンタル不調が原因の離職について、個別ケースにもよりますが、全くの失業状態になるよりはカウンセラーと相談しながら短時間・短期間でも派遣就労でき、それが労働者にとってプラスになるなら、そのような例外はあってもよいのではないかと思います。

ランスタッドでは、お客さまからの求めに応じて正確な情報を提供し、専門家との提携にて実務のご相談に応じております。 他社派遣スタッフに関する質問であっても、ぜひ、お気軽に当社にお問い合わせ下さい。

(2012年8月掲載)


このコラムに関するお問い合わせ:
ランスタッド株式会社 コミュニケーション室
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Email: communication
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労務コンプライアンスノート本コラムでは、多様な人材を活用する企業人事部門の皆さまが、コンプライアンスに則った適正な形で人事・労務業務を遂行いただけるよう、ランスタッド顧問社労士がバラエティに富んだ労務トピックスを分かりやすく解説いたします。

特定社会保険労務士 田原 咲世 (たはら・さくよ)

1968年大阪生まれ。立命館大学修士課程修了後、旧労働省に入省し、労働基準法・男女雇用機会均等法・派遣法改正などを担当。2008年3月まで北海道労働局の需給調整指導官として活躍。2008年4月から札幌で北桜労働法務事務所を経営。特定社会保険労務士として、労働関係法を中心とした指導を行う。現ランスタッド、顧問社労士。

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